知人に勧められたApple Vision Pro用のヘッド・ストラップを購入したところ、これが素晴らしかった。こめかみあたりから斜め前に伸びて額の上部を覆うストラップだ。しかも、ライト・シールを取り外してApple Vision Proを使うこともできる。ちょうどディスプレイが目の前に浮かぶ状態だ。これにより周辺視野が広がる。苦労して改造した枠だけライト・シールよりも開放感があり、遥かに安価。
このストラップは自由な行動を可能にする。周辺視野が十分に確保されているので、周囲の状況を把握できるからだ。重たいディスプレイを額や後頭部で支えている圧迫感は否めないものの、安全であり、安心感がある。そして何よりもパススルー映像と周辺視野が自然に繋がっていることに驚く。眼前の大きさや距離感などが正確に再現されている証しだ。
精緻なディスプレイによる眼前の再現性は、ライト・シールがなくなって一層際立つ。周辺視野があるからこそディスプレイが映し出す中心視野が美しく、その中心視野があるからこそ周辺視野が瑞々しい。これは網膜的快楽だ。現実以上の現実であり、何一つオーバーレイしていなくても、これは紛れもなく拡張された現実だ。その輝きの中を自転車で走る愉悦を一度は体験して欲しい。
ただし、visionOSのアップデートのせいか、以前より外光条件が厳しくなったのかもしれない。明るい屋外で使用していると、ディスプレイの表示が消えることが何度かあった。そのような場合にはディスプレイと額の隙間を手で覆えば復帰する。そこで上部にだけ覆いをかけると良さそうだ。周辺視野の上部は空の領域だから、見えなくても少し悲しいだけで済む。
また、相変わらず自転車ではApple Vision Proを本格的に使えない。少し速く走ろうものなら「Moving Too Fast」と表示され、ウィンドウなどが消え去るからだ。もちろんパススルー映像は続いている。そうでなければ視界が真っ暗になり、危険極まりないので当然だ。しかしその瞬間、魔法が解けて現実に引き戻された気分になる。真の拡張現実はいつもたらされるのだろう。