自転車建築(26)スマホ版体験キットを作るⅦ

今回も引き続き、自転車建築キットの進捗と、新たに試した空間形状の検討内容について報告する。

キットは、自転車に装着した際にどんな車体にもなじむよう、凹凸を抑えたミニマルでニュートラルな佇まいを目指して調整を進めている。見た目の洗練だけでなく、強度や撮影のしやすさといった実用性にも配慮し、ネジ穴が表に出ない構造や、組み立てやすさなど、複数の要素をバランスよく両立できる形状を模索している。

今回の主な更新点は、以下の2点である。

1.スマートフォンを覆うカバーのデザイン変更

カバーはスマートフォンだけでなく、キット全体を覆う構造へ変更し、ネジを内側に隠すことで正面の凹凸を排除。フラットで端正な印象を持つファサードに生まれ変わった。また、このカバーは上部へスライドさせることで簡単に着脱できる設計とし、実用性にも配慮している。

正面

2. スマートフォン固定部形状の見直し

全体のデザインコードとしては幾何学的な構成を基調としている。空間部分のパーツは取り外し式で、さまざまな形に入れ替えが可能なため、それ以外の部分は視覚的なノイズを抑えた形状を追求した。スマホ固定部分のパーツ数を見直し、削減を図るとともに、形状には緩やかな曲線を取り入れた。これにより、直線的な空間パーツとの対比と調和が生まれることを狙っている。

左側面
右側面

今回試した空間はトンネルのように奥に細長い空間構成の案である。

ただ、自転車を大学に置き忘れてしまい、自転車での試走動画を撮影できなかったため、今回は動画を載せていない。代わりに、自転車建築キットを手に持ち、散歩しながら撮影した写真を以下に掲載する。

歩行に合わせて、空間が色彩に満たされていく様子はとても美しく、まるでジェームズ・タレルの作品のような印象を受けた。色に包まれた空間を眺めていると、不思議と心が穏やかになっていくのを感じる。最近、このキットの制作と撮影を続けている理由のひとつに、それが自分にとっての“メディテーション”のような行為になっているからではないかと気づいた。光や空間の変化をじっくりと見つめる時間は、心を整えてくれるのである。

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