自転車に乗って風になる。この時、鳥に導かれるだけでなく、ドローンを従えることもできる。多くの製品が追従機能を備え、疾走する自転車を自動的に追いかけるからだ。なかでも、DJI Flipはエントリー・モデルながら、手軽さで他を抜きん出ている。 何しろ、コントローラなしでも典型的な撮影ができるので、自転車に乗る楽しみが広がる。これぞ快楽原則。
操作は至極簡単。プロペラを広げれば電源が入る。次に側面のモード・ボタンを押してフォロー(追従)を選ぶ。このボタンを長押しすれば、カウント・ダウン後に手から飛び立つ。この時にドローン正面の人物を追いかけることになる。雛鳥のインプリント(刷り込み)だ。ひとしきり撮影を行えば、ドローンの下に手を差し伸べる。これでドローンが舞い降りる。プロペラを畳めば電源が落ちる。
このモードでは4〜5mの間隔を保って被写体に追従する。撮影された映像では、ちょうど良い画角や構図で走行が捉えられている。速度を変え左右に振り、そして引き返しても大丈夫。ただし、DJI Flipの最大水平速度は無風状態で12m/s、すなわち43.2km/h。これを超える速度で走ると、次第に距離が開き、やがて追従を諦めてしまう。対象との距離推定も甘いようで加速と減速が頻繁に繰り返される。
このように現状では問題点も少なからずある。とは言え、この手軽さは高く評価したい。巡航や追従の能力、そして取り扱いの簡便さは今後飛躍的に高まっていくはずだ。既にDJIはBYDと協業して車載ドローン・システムを開発している。従来のドックの標準化であり、大衆化だ。これはいつか小鳥のようになり、自転車のハンドルに留まったり、自転車と一緒に飛んだりするに違いない。
なお、今回の撮影では後続の者がモニタ付きのコントローラを持ち、視界内で飛行させた。周辺には補助員が立って安全確保のために監視を行っている。しかし、これを一人で行うのは難しいかもしれない。ドローンの目視外飛行要件と自転車の安全運転義務の両立が求められるからだ。ただ、すでにレベル4(補助者なしの目視外飛行)が可能であるだけに、手軽な自律飛行の早期実現を期待したい。
ヤッシー 風になった。