
シングルスピード化したカーボンフレームのロードバイクを、シングルのギア比を2通り備えた「ディングルスピード」自転車に改造した。その仕様と雑感をメモしておく。前回の記事の追記のようなものなので、まだの方は先にそちらを読んで頂くのがよいと思う。
一般的な現代ロードバイクのディングルスピード化に必要なのは、まずは歯数の和が(ほぼ)等しくなるチェーンリング&シングルコグ2ペア。それからプーリー2枚と、これらを並べて装着できるチェーンテンショナー。コグの位置を合わせるためのスペーサーも一揃い。

全て集まったので組んでみた。重い方のペアのギア比は41T/18T≒2.28である(前回の記事から変わっていない)。ちなみにクロモリのディングル車は42T/18≒2.33。この数字だけだと軽くなっているように見えるが、タイヤの太さがそれぞれ32Cと26Cなので、負荷は同じくらいだろうか。All City CyclesのGear Calculatorでギア・インチ(ひと漕ぎで進む距離を比較するのに使う)を計算すると、カーボン車の方は61.45、クロモリ車は(26Cが選択肢に無いので25Cで代替)61.37と出た。実際ほぼ同じらしい。

軽い方のペアは38T/21T≒1.81でセットアップ。41+18=59と同じ和になる組み合わせの中から、丘陵地帯などの散策に程良く、また現実にパーツが手に入るギア比を選定。ギア・インチは700x32Cで48.82。なおクロモリ車は39T/22T≒1.77でかなり軽く、25Cで計算したギア・インチは46.83となる(前に使っていた39T/21T≒1.86、ギア・インチ49.07に戻そうかと思っている)。こちらを「山モード」、重い方を「里モード」と呼ぶのがわかりやすいかもしれない。

モードチェンジはクロモリ車の方が簡単だった。いわゆる「ロードエンド」なので後輪のクイックを緩めてチェーンを掛け替え、またテンションをみながらクイックを締めれば完了。今回の場合、スルーアクスルゆえにチェーンを迅速かつたっぷりと緩めることができず、テンショナーのバネを左手で圧縮しながら右手でそこそこ頑張って掛け替えを行わなければならない。チェーンリングとコグだけでなくテンショナーのプーリーも掛け替え対象なので、手数と労力の総計はざっと倍以上という感じだ。チェーンラインの移動量に合わせて1枚のプーリーをスライドさせる機構を実現すれば楽になるかも、との友達のアイデアを形にできるとよいのだが。

前回の記事で書いた輪行についても、実際にやってみるとカーボン車の方がやはり手間が多く、軽さによるメリットを考慮してもトータルでマイナスと感じている。走ったり担いだりの全体でどうなのかは、これから見えてくるだろう。確かなのは、このカーボン・ディングルスピード・オールロードバイクはクロモリのディングルスピードロードバイクの上位互換ではないということだ。
26Cのクロモリ車には、「アンダーバイキング」の面白さがある。自転車のスペックが状況をゆうに上回ってしまうことが多くなった今、あえて足りないところの多い自転車に乗ることで様々な状況の中にワクワク感を発見し直すアプローチをこう呼ぶ。32Cのカーボンバイクは、そこそこいけてしまう場面が増えるぶんアンダーバイキングの要素が薄れる。26Cと違って砂利道が大の苦手、ということもないが、かといってもっと太いタイヤを履いた自転車ほど楽しめもしない。
とりあえずどんな道にも入っていける、中途半端な性能。いつも素直で優しく、さらりとした優等生。ここをどう評価するかは、自分の遊び方、時間の使い方によるのだと思う。しばらく乗り込んでシンクロ度を上げ、また考えてみたい。