
自転車をテーマとした漫画やアニメってあるのだろうか。
ふと考えた。私がパッと思いついたのは、中学生の頃にとても流行っていた「弱虫ペダル」という作品である。この作品は、主人公が高校でロードレースと出会い、インターハイ優勝を目指すという熱いスポーツ漫画であり、アニメ化もしている。時に、スポーツ漫画はそのスポーツを盛り上げるきっかけとなる。スポーツ漫画の代表とも言える「テニスの王子様」が好きな友達は、実際にテニス部に入部していた。この「弱虫ペダル」によって、自転車に乗り始めた人も多かったのではないだろうか。スポーツ漫画ではないが、私も「けいおん!」が好きだったことを理由に、音楽ができる部活に入ろうと決めたものだ。
他にも自転車をテーマにした作品がないか調べてみたところ、ある漫画に出会った。「東京自転車少女。」だ(https://amzn.asia/d/hLZ0yxc)。どうやらレースで競うという熱い内容ではなく、いわゆる「日常系」のような女子高生がゆるゆると自転車散歩をする、というものらしい。
私の記事も「ゆるく」という言葉を使っているので、「ゆるく」自転車に乗るこの漫画のことを記事に書けないかと思い(必死に記事のネタを探した)、思い切って中古で全11巻を買ってみた。
まだ2巻までしか読めていないのだが、力を入れずにゆるくスイスイと読みやすく感じた。
簡単にあらすじを説明しよう。舞台は東京都練馬区。東京ガールに憧れ田舎から上京してきた高校生の島野いるかが、東京生まれ東京育ちでありながら東京嫌いのクールな女の子、加藤さんと出会うところから物語が始まる。そして、加藤さんは島野いるかに巻き込まれるように、謎の部活「自転車天使部(チャリーズエンジェル)」に入部し、そこで練馬区を中心に自転車でポタリングする。
この漫画では、実際にキャラクターたちが通ったルートが地図に記されており、読み終わった後にすぐにキャラクターと同じ道を巡ることができるようになっている。東京都練馬区で暮らす人であれば、すぐに聖地巡礼しに行くことができる。
また、キャラクターによって使用している自転車の種類が異なっていた。クロスバイクやミニベロから痛チャリまで・・・様々な自転車が登場する。自転車の違いは未だにパッとは分からないが、街中でミニベロをみるとフォルムがとても可愛いと感じるようになった。私が乗っている自転車は、白地に赤で「VOODOO」と書かれている。私的にこのデザインはとても気に入っていて、誰のとも似ていない特別なその自転車と、それを乗りこなしている自分にいつも得意気になっている。
漫画の話に戻ろう。この漫画のいるかちゃんと加藤さんは対照的に描かれており、物語の主役が2人いると私は感じた。いるかちゃんは、田舎から上京してきたこともあり、東京のあらゆる場所に対して好奇心旺盛で、その自由奔放さで周囲の人を振り回す。つまり、グイグイと「東京自転車少女。」の物語を進めていくという重要な役割を持ったキャラクターである。
対して、加藤さんは王道の主人公のように物語を進めていくような性格ではない。加藤さんは、東京を窮屈で急かされる場所と感じ、必要以上に他人と干渉しないことが東京で暮らすためのルールだと思っていた。他人にはかなり冷たい態度をとっていたし、東京を抜け出したいという気持ちもあり、遠くまで行けるロードバイクが好きだと語っていた。しかし、いるかちゃんに振り回され色々な場所を巡るうちに、東京の今まで見えていなかった素敵なところを見つけ出し、人と関わり、加藤さんは変わっていく。「東京自転車少女。」は、加藤さんの成長の物語でもあるのだ。
作中に、「見ようとしたものしか、目に入らない」という言葉が出てくるのだが、この作品では「みる」ということの大切さが伝わる。人と関わるときも同じであるが、嫌なところに目を向けて関係を築いていたら、周りが自分の嫌いな人ばかりになるはずだ。
春になって暖かくなってきたし、桜も開花してきたから、散る前に大垣をポタリングしよう。