2月上旬に八丈島、そして青ヶ島を訪れた。極寒期は南の島で極楽ライド、ではない。それは台湾で懲りている。そうではなく、台湾でエッジ(国境)を意識し、「日本の国境に行こう!!」という極楽サイトを思い出したからだ。この美麗な観光旅行サイトは内閣府が作っており、しかも何故か2月末に閉鎖される(調査レポート)。そこで国粋主義者には程遠いものの、日本の国境に行くことにした。
八丈島も青ヶ島も伊豆諸島南部の離島で、東京都に属している。八丈島は羽田から飛行機で約1時間で1日3往復と訪れ易い。ところが青ヶ島はハードルが高い。八丈島との1日1往復のヘリコプターは旅客定員9名で、搭乗日の1ヶ月前朝9:00からの電話予約争奪戦に挑まなければならないからだ。同じく1日1往復の船は就航率が50%ほどなので、日程に余裕がなければ現実的でない。
実際にも、前日の八丈島へのフライトは問題なかったものの、その日の夕方から雪や雹(ひょう)が激しく降る。全国的に大寒波が襲来していた時期だ。案の定、当日の朝は飛行機も船も欠航。しかし、ヘリコプターはこともなげに飛び立つ。途中の揺れも激しくない。そして約20分、濃霧から現れた絶海の孤島は、誰かが3Dモデリングしたのかと思うほど異様で壮麗な姿をしている。
ヘリポートからはレンタカーに乗り込み、これで島を巡る。そう、自転車ではない。事前に村役場や宿、レンタカーや商店などの方々に問い合わせていたものの、島では大人は誰も自転車に乗らない、持っていない、子供が子供用自転車に乗る程度、といった返事。道路は狭く急勾配で、自転車に乗るのは極めて危険だからと言う。このことは現地に降り立って、すぐに実感した。平地などどこにもない。
従って今回は自転車が登場しない。自転車から世界を考えるクリティカル・サイクリングにあるまじき事態だ。だが、仕方がない。自転車に乗れない島で自転車について考えてみる、と嘯いておこう。ちなみに、船で自転車を持ち込んで乗る人は稀にいるそうだ。Bromptonならヘリコプターに乗せられても、電動でなければ急勾配に耐えられないだろう。転倒して大怪我をしても手術ができる病院はない。
それでは開き直って単なる旅行記としよう。帰路の電話予約争奪戦に負けたので滞在は1日だけ。それでも主要なところは見て回ることができる。何しろ人口161人で日本でもっとも人が少ない村だ。集落は小さく、いくつかの道路は崩落して行き止まり。自然の厳しさゆえだろう、丹念に積まれた玉石や点在する小さな祠や神社に信仰心の厚さが伺える。シャーマニズムも息づいているらしい。
この島に住むことになれば、いつしか自転車に乗ることを忘れてしまうだろうか。以前に住んでいた街でも、高台に生まれ育った人は自転車に乗らないし、乗ることができなかった。スポーツとしてのヒルクライムやダウンヒルが有り得ても、自転車は基本的に平地での乗り物であり、舗装道路を好む。そんな当たり前のことを痛感させられ、当たり前のことが当たり前でなくなるのが青ヶ島だった。
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