”サイクリングを音楽にする”という発想から始まったプロジェクト「Sound of Cycling」。制作過程記録の第3回目は、センサーから取得した数値を音楽にするためのプロセスと、システムの実車への搭載についてお伝えする。
風と動作の音楽化プロセス
以下、システム概略図。制作時のメモ代わりにも使っていたもので、最終的に変更された箇所もあるがおおよその全体像を示している。

マイクから取り入れた風の音とブレーキレバー操作音には、うねりの効果が得られるエフェクト(フランジャー等)と音を反復させるディレイをかけた。ペダルに設置したセンサーは、車体の左右の傾き、軸角度、加速度を取得し、それぞれのパラメータに基づき設定したオーディオファイルとオシレーターによる発信音を再生させた。オーディオファイルは「空間系音源」として、デモ作成時に収録した風切音を加工した音を使用した。また「ビート系音源」としては、フリーで公開されているドラム音源のスネア、キック、ハイハット音を使用した。同じパラメータを基に、発音タイミングをずらすことで「ドン」「タッ」「チッ」とリズムを刻むようにした(一定のテンポで鳴らすのは困難であったが、それはそれで予期せぬリズムを生み出した)。また、PCに搭載されているカメラから取得した明暗のパラメータに沿って、暗くなったら鳴らす音色を変えるなどの小技を加えた。
音響とリズムの調整
いずれの音色も、パラメータによりその音程や発音タイミングが変化するように設定している。風が強くなったりペダルの回転が速くなるにしたがって音やリズムが「アガっていく」という具合に、加速していくサイクリングの爽快感を表現したかった。実際に何度もセンサーを回して都度調整し、目指す音像に近づけていった。それぞれが単発で鳴っているだけではそれは「効果音」である。音楽として成り立たせるには、同時に鳴る音のハーモニー(たとえ不協和音であっても)が重要と考えた。最終的に4系統の音を出力する形とした。
車体への搭載
次に自転車本体への搭載を進めた。風の音とブレーキレバー操作音を拾うためのコンデンサーマイクを百均ショップで購入した自撮り棒でハンドルに括り付け、センサーとなるiPod Touchはペダルに縛り付けた。また本体となるPCはトップチューブにぶら下げ、いわゆる「前三角」と呼ばれるスペースに収めた。ボトルケージには円柱型のスピーカーを装備している。

PCは折りたたんでタブレットとして使用するが、裏側はキーボードがむき出しになるため、カバーとして同サイズの段ボール空き箱を使用した。この箱はキーボードのカバーであると同時に、ケーブル類やモバイルバッテリー、ポケットWiFiの収納ボックスとして有用であった(ちなみにこの空き箱は「M5StickC Plus」が梱包されていたもので10インチのPCにジャストサイズであった)。

センサーを包むケースも段ボールで制作したため全体的に手作り感あふれる質感となったが、カジュアルな雰囲気にもなったと思う。

(かっこいいから)
クロスバイクでもロードバイクでも搭載可能だが、スペースと傾きの問題からトップチューブがホリゾンタルなタイプが向いている(おのずとクロモリフレームの車種になる)。

(次回、走行実験・展示編へと続く)