当然のように台湾でも自転車シェアリングは盛んだ。台北でも、後に訪れた台中でも、白と黄色の自転車YouBikeをよく見かける。どこにいても少し歩けばドック(スタンド)が並んんだ貸出ステーションがある。専用のYouBikeアプリを使えば、近くのステーションの場所や利用状況がすぐに分かる。筆者も地下鉄では遠回りだっり、バスでは分かりにくかったりする場所に行くのに何度か活用した。
YouBikeは悠々カード(交通系ICカード)をかざすだけで手軽に利用できるらしい。ただ、そのためには台湾の電話番号でSMSを受け取る必要があり、筆者が利用していたのは電話番号のないeSIMなので認証できなかった。もうひとつ方法は、電子メールで認証し、クレジット・カードで3,000TWD(約14,300円)のデポジット(保証金)を預けること。これで120時間(5日間)の利用が可能になる。
この場合は、利用したい自転車のハンドル部にあるScan QR codeボタンを押し、表示されるQRコードをYouBikeアプリで読み取れば良い。これでロックが解除されるので、ドックから自転車を引き出す。返却する場合は、ドックの固定具に自転車を差し込むだけ。最初に手順を確認しておけば、とても簡単だ。前カゴがあり、一時的な駐輪に使えるワイヤー・ロックも気が利いている。
自転車自体はいわゆるママチャリ型で、乗り心地や整備状況は可もなく不可もなくといったところ。料金は30分ごとに10TWD(約47円)と安い。短時間の使用が推奨されているようで、長時間になると単価が上昇する。また、後輪カバーがオレンジ色の電動アシスト型もあり、単価は2倍になる。アシストは強力ではないので、特別な事情がなければ普通の自転車で良いだろう。
ところで、ハンドル中央の操作部は大ぶりで走行中は無用の長物。しかもスマートフォンを取り付ける箇所がないのが辛い。スマートフォンを注視するのは危険とは言え、見知らぬ街でのナビゲーションには必須だからだ。この点ではホー・チ・ミンで乗ったTNGOが優れている。ハンドルにスマートフォン・ホルダーを備え、小振りのコントローラが後輪部にあるのも使い易かった。
ナビゲーションとしてはGoogleマップが自転車に対応している。これにはYouBikeタブがあり、現在地と目的地に近いステーションを含めて案内してくれる。利用できる自転車の数と空いているスタンドの数も表示される。日本でも同様の機能が提供されている。一方、Appleマップでは自転車ルート検索ができなかった。悠遊カードもApple PayやGoogle Payに取り込めないらしい。
ちなみに、自転車を含めてシェアリング・システムはジャイアント(Giant)が手掛けている。2009年に始まったYouBike 1.0では自転車は簡素で、貸出ステーションのドックにコントローラが備わっていた。現在は2020年に登場したYouBike 2.0に移行しており、コントローラは自転車に移っている。将来はドックレスになり、自転車のインテリジェント化が進むのだろうか。
自転車は移動体(Mobility)であるのに対して、貸出ステーションは不動体(Immobility)であるので、本質的に相容れないのかもしれない。常に悩ましい再配置問題(Bike Rebalancing Problem, BRP)も、この矛盾に起因する。自転車シェアリングのエッジ(限界)だ。なお、YouBikeの再配置では後輪にカバーがかけられ、丁寧に扱われていることが伺える。