Cycling Edge 31: 台北

12月の後半に台湾に出かけた。年末年始の混雑を避け、暖かい場所で自転車に乗る魂胆。ところが、台北に着いて驚いた。人々がダウン・ジャケットやロング・コートを来ていたからだ。日中は20℃近く、夜でも10℃以上あるとは言え、現地の人は15℃以下を日本での氷点下に感じるらしい。実際にも小雨混じりの曇天で肌寒く感じる。寒波が到来しているそうだ。夏服ばかり持参したことを嘆く。

翌日、Rapha Taipeiに出かけて自転車を借りる。フル・カーボンの車体にSRAM Force AXSのコンポーネント。中級グレードとは言え、気軽にレンタルできる自転車としては最上クラスだろう。実際にも乗り心地は良く、平地から坂道まで滑らかに駆け抜けてくれる。大袈裟なロゴが辛すぎるものの、黒にピンクのカラーリングが映える。ファイバーの肌理を残した塗装仕上げは好みが分かれそう。

スタッフに近郊のお薦めルートを尋ねたところ、店内の一角に設えたテーブルに案内された。このボードには台北の地図にルートが描かれ、ルートごとに名称、人気度、距離、獲得標高が記載されている。QRコードはRide with GPSの詳細情報へのリンクだ。なかなか気が利いている。ただ、地図は簡単過ぎて部外者には分かりにくい。等高線入りの立体的な地形図が欲しいところ。

この日は半日しかなかったので、先のボードでは11番の環小台北自行車道の北西部を走ることにした。最初は市街地で、休日なので交通量は少なめ。外側の車線は一部が駐車帯で、残りはバイクと自転車しか走れないのが好都合。路面も整備されていて滑らか。右側通行にもすぐ慣れる。台湾はバイクが溢れている印象があったので拍子抜け。しかし、平日は大混雑になり、交通事故も多いそうだ。

基隆河に達すると川沿いのサイクリング・ロードに入る。道幅は狭いながらも綺麗に整備されており、安全に快適に走ることができる。休憩所や公園も多い。やがて基隆河と淡水河の合流地点へ。広々した眺望と岸辺のマングローブに目を見張る。次いで淡水河沿いのサイクリング・ロードが続き、台北は川に囲まれた都市であることを実感する。氾濫を防ぐ高いコンクリート壁が印象的。

夕暮れが近くなり、川辺を離れて台北MRT(地下鉄)へ。休日はサイクル・トレインが実施されている。通常の悠遊カード(交通カード)は使えず、窓口で通常運賃と自転車持ち込み料金80TWD(約380円)を支払う。そしてエレベータでホームに向かい、先頭または最後尾の車両を利用する。東京や大阪では望むべくもないので、自転車と共に地下鉄に乗るのは愉快。台中でも同様らしい。

翌日は環小台北自行車道の東部を走る。市街地から東に向かい、基隆河サイクリング・ロードを川上へ。そして深南路(県道109号線)に入って新北市への峠を目指す。激坂ではないので、普段は電動アシストに頼っている軟弱者でも程々に楽しめるヒルクライム。片道2車線のうち外側1車線は自転車専用なのが嬉しい。時折見える街の展望も素晴らしい。小雨で路面が濡れていたので、下りは「慢」(ゆっくり)。

ランチは深坑老街で有名な臭豆腐に挑戦。お店の方も心得たもので、店内に自転車を置かせてくれる。冷えた身体に熱い鍋が嬉しい。それほど臭いとは感じず、大腸や豬血(血の塊)も美味しい。その後は景美渓のサイクリング・ロードへ。この川は新店渓を経て淡水河へと続き、自転車道も続く。つまり台北は川と山に囲まれており、自転車道が街のエッジ(縁)となっている。

川沿いのサイクリング・ロードは、適度な人通りで快適に走れる。散歩からロード・バイクまで人々は思い思いに楽しんでいる。ただ、同じような景色が続く単調さに飽きてくる。そこで川を離れて市街地に入る。かつて世界一の高さを誇った台北101や、路上マーケットが開かれている中山公園など中心地をまわる。寒さのせいなのか、なぜか人通りは少なく路上の混雑も少ない。

台湾、特に台北では小綺麗な街角と猥雑な路地裏が隣り合っている。どこかくたびれた台湾らしい風情を自転車で駆け抜けていく。台湾と言えばジャイアント(Giant)メリダ(Meria)といった自転車メーカーが有名だ。自転車天国と呼ばれることもあるものの、それほど自転車が多いわけではない。以前に訪れた時は辟易したスクーターの洪水も、平日のラッシュ・アワー以外は落ち着いているようだった。

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