2025年1月10日から19日まで、名古屋の市民ギャラリー矢田にてファンデナゴヤ美術展2025が開催された。
IAMAS博士前期課程2年の浅尾楽が企画した「フレームの中、フレームの外、ゆらぎの境界」が採択され、筆者の門田とIAMAS卒業生の西尾秋乃でグループ展を行った。

企画概要
現代社会において、映像は主にスマートフォンやパソコンの画面で視聴されています。このように、映像の撮影から公開までが身近なものとなり、SNSで共有される映像は短時間で早いテンポや衝撃的な内容が主流となっています。その結果、現在の身近な視聴環境では、映像が本来持つ変化や細部の魅力が十分に伝わらない可能性があります。本展示は、2人のアーティストによる作品を通じて、映像表現の新たな地平を探求し、視覚体験に再考を促す試みです。門田健嗣の作品は、建築や空間における表現を通して、物理的に映像フレームを拡張する手法を用いています。一方、西尾秋乃の作品は、映像フレーム内でフレームを意識させないコラージュアニメーションを駆使し、繰り返し見る中で発見や規則性を見出せるような体験を提供します。両者の作品は、現代の一般的な映像視覚体験とは大きく異なる表現を展開していますが、それを鑑賞することで、私たちが日常的に接している映像体験に対する新たな視点や意識を喚起する展示となっています。
企画:浅尾楽
作品解説
門田は大きく分けて、修士作品を発展させたもの、自転車建築に関連する作品の2つを展示した。
ここでは自転車建築関連の作品のみご紹介する。
本展示では、前々回から制作を行うと宣言していた球体の模型を用いたSphereと、女子美の助手展から制作を進めているLight on Earthシリーズの新作を展示した。

・Bicycle Architecture: Sphere
本作はエティエンヌ・ルイ・ブレー(Etienne Louis Boullée)の「ニュートン記念堂」から着想を得た。地上の照明を建築空間に星のように投影することで、宇宙を想起させる視界が展開する。職場から自宅までの帰り道を撮影した、およそ46分の映像作品である。なお、本作に着手した経緯は第18回の記事に記載している。


・Light on Earth #1,#2,#3
夜間の街中で捉えた瞬間的な風景が、模型の構成に応じて点、線、面の光へと変化し、模型内に光の造形物として映し出される作品。その光は音楽のリズムを思わせる視覚表現を生み出し、同時録音した環境音と融合することで、鑑賞者にオーディオビジュアル体験を提供する。



・Light on Earth:Window
本作は建築における窓と映像ディスプレイを重ね合わせ、多層的なフレームを通じて世界の運動をよりオプティカルに捉える試みである。この多層的な視点は、建築空間が単なる物理的な構造にとどまらず、動的な情報を媒介するメディアとしての可能性を示している。ちなみに、ディスプレイに映し出されている映像は「Light on Earth #3」である。ディスプレイで再生される時に「Window」という作品名になる。

今後の展開
Bicycle Architecture: Sphereは、光の粒が群れとなり画面を覆う刺激的な瞬間がある一方、大部分は数個の光点が微かに動く静かな映像が続く。そのため、鑑賞タイミングによっては変化の少ない映像を眺め続けることになる。日常のアーカイブとしての性質を損ないたくなく、無編集で展示したが、結果的に魅力的な部分を抽出して再構成した方が、多くの人に楽しんでもらえる作品になったのではないかと感じている。映像の見せ方に検討の余地あり。
Light on Earthシリーズに関しては、「大きな画面で見たい」「空間として体験してみたい」という意見が多く寄せられた。次回作は大きなディスプレイやプロジェクションを用いた展示形式を試そうと思う。
写真:小濱史雄