ニューヨーク発の自転車映画祭Bicycle Film Festival(BFF)が尾道で12月21日に開催される(12:00~)。みんな忙しい年の瀬、しかも直近のイベントになるが、都合がつきそうな人はぜひ足を運んでほしい。実務的な事項はチケットサイト https://peatix.com/event/4201379?lang=ja-jp にまとまっているのでそちらで。ここでは行こうか迷っている人などに向け、字幕翻訳に関わった立場からさらっと上映作品を紹介する。
1. Dan Deacon – The Breakaway (3 min.)
元プロロードレース選手David Millarの視点で、流れる風景の色や光を凝縮した美しいミュージック・ビデオ。ミラーの現役最後のシーズンに密着した長編ドキュメンタリー Time Trial の一部分でもある。楽曲はアメリカの作曲家Dan DeaconによるThe Breakaway。2019年イギリス、Finlay Pretsell監督。
2. EBRO (10 min.)
秋に一度、ニューヨークの街を駆け抜ける大規模ライドEBRO=EveryBody’s Ride Out、その祝祭的スピリットとエネルギーを伝える作品。どこの誰でも関係なく、ただ共に楽しむために数千人が集うストリート文化は、自転車という領域に限らずとても刺激的だ。Ian Bartlett監督。
3. All Bodies On Bikes (13 min.)
どんな体型でもサイクリングは楽しめるし、速いから偉いわけじゃない。人より大きな身体がずっとコンプレックスだった二人が、自転車を通じてつながり、一緒に冒険の旅(バイクパッキング)に出る。私たちを縛る先入観をほどき、もっと自由な世界へ―。2021年アメリカ、Zeppelin Zeerip監督。
4. Cycles (4 min.)
恋人との関係が唐突に終わってしまった主人公が、記憶の断片のループに陥る。G. I. Gurdjieffのピアノ曲に合わせた、演劇的なイメージの「サイクル」。2016年カナダ、Joe Codben監督。
5. Cycling With Molly (2 min.)
24歳で自転車の乗り方を習得した主人公モリーの自由奔放な世界を描く短編アニメーション。初期衝動のままに突っ走る姿が楽しい。2020年イギリス、Sara Chia-Jewell監督。
6. Snow Warrior (8min.)
カナダ中部、人口100万の都市エドモントン。この街の冬の厳しさと美しさを、メッセンジャーの女性マライアの一日を通じて映し出す。凍てつく空気とメッセンジャーという仕事の不思議な魅力がスクリーンを越えて伝わってくる作品。2020年カナダ、Frederick Kroetsch・Kurt Spenrath監督。
7. Styrofoam (5 min.)
出稼ぎ労働者として上海で暮らし、発泡スチロールの回収と売却のために自転車を走らせるグゥオ・ヂィエ。今を生き抜こうとする女性の姿を、静かに見つめるように描く。2017年中国・アメリカ、Noah Sheldon監督。
8. The Nine Wheels (22 min.)
母親の病気をきっかけにキャンピングカーでヨーロッパ各地のバイクパークを巡る生活を始めた「9輪」一家。プロを目指す兄弟は、両親との旅から生きるとは何かを学んでゆく。自由と幸福を本気で追求する姿が強く胸を打つ。2022年スペイン・イギリス、Santiago Burin des Roziers監督。
9. Kevin Bolger (5 min.)
28年のキャリア(製作当時)を誇るニューヨークの伝説的メッセンジャーが明かす、ストリートを生き抜いてきたノウハウと哲学。2022年アメリカ、Jennifer Boyd監督。
10. The Ceder (6 min.)
南アフリカ西部の山岳地帯で開催されるグラベルレース「シダーバーグ」。その過酷さと魅力を参加レーサーたちが語る。普段めったに見聞きすることのない地域が舞台になっている新鮮さと、サイクリングの普遍的な心象が交錯する一編。2023年南アフリカ、Adriaan Louw監督。
11. Reza – The Blind Mechanic (5 min.)
イラン第二の都市マシュハド。レザ・アリザデは生まれつき盲目ながら、触覚や聴覚を鋭敏に働かせて自転車整備士として暮らす。障害を抱えた者に厳しい社会の中、それをものともしない彼の誇り高さが刺さる作品。2022年イラン・アメリカ、Josh Wolff監督。
12. I Ride My Bike When The Air Is Crispy (1 min.)
自転車で出かける最高の秋の日(?)を3DCGで描いたミュージックビデオ的ショートショート。強引な展開につい笑っちゃうはず。2020年アメリカ、Julian Glander監督。
13. The Trails Before Us (13 min.)
馬と共に生きてきたアメリカ先住民、ディネ(ナバホ)の人々。17歳の少年ナイジェルは古の「馬の道」をよみがえらせながら土地に根差したマウンテンバイク文化を広め、彼らの保留地で初めてとなるエンデューロレースRezduroを開く。美しく、かつ侵略と抵抗の歴史にも向き合った映像が、新しい視点から自転車の可能性を考えさせてくれる。2022年アメリカ・ナバホネーション、Fritz Bitsoie監督。