Visions in Motion 21:原付と日常

コロナ禍に入ってしばらくして、電動バイクを購入した。といってもペダル付きのタイプで、バッテリーが切れても自走できるのが特徴だ。スペックは、モーター定格出力:500w、航続距離:50km。原付1種:排気量50cc以下(電動機の場合は定格出力0.6kW以下)の区分となり、ナンバー登録、自賠責保険の加入、普通自動車免許(または原付免許)が必要。法定速度は時速30km、交差点での二段階右折が定められている。

COSWHEEL

購入後3年間で1000kmほど走行した印象としては、前後のサスペンションは路面の凹凸を吸収し、ディスクブレーキの制動性も十分である。フレーム上部にバッテリーが格納されているため、重心が高くフラフラする印象は否めない。真夏に風を切る疾走感は気持ちよく、冬はそれなりに肌寒い。(機種に限った話ではないが)

通勤で往復20kmの距離はスペック上問題なく、帰宅後に100Vのコンセントで6時間あれば充電できる。運動不足やバッテリー不足を感じた際には、ペダルを漕ぐことで冬の寒空下では心地良い(ただバイク用のヘルメットを被ってペダルを漕いでる姿は、異様な形相かと想像する)。変速ギアはシマノ製の7段がありトップに入れて使用している。

自転車のような身軽さはないものの、35kgの車重による十分な剛性はあるが、スペック上は登坂角度約20°に対応可能な性能を意識せず、池田山山頂まで(標高:900m、登山道:10km)に挑戦した。人力(ペダル)とのハイブリッドでなんとか登り切ることができた。

Smith Motor Wheel

ちなみに「原動機付自転車」という名前は、エンジンやモーターといった動力が自転車に付属していることに由来する。フランスでは蒸気エンジンによる補助動力を使った事例や、国内では戦後にホンダのスーパカブが普及する一方で、「バイクモーター」と呼ばれる後付け式のエンジンキットが販売されていた。なお、この記事のアイキャッチ画像にはは、アメリカのSMITH製品を用いている。

スーパカブ

1955年のトヨモーター《E8型》90ccが38,000円、125ccのオートバイでは1955年の《FE型》が120,000円と非常に高価なものだった。それでも普及するほど、仕事や生活で大いに役立つ必需品であった。参考までに、1954年当時の小学校教員の初任給は7800円だった(『戦後値段史年表/朝日文庫』朝日新聞社、1995年)。

Moped(モペッド)は、「モーター(motor)」と「ペダル(pedal)」を組み合わせた造語。大辞林によれば「モペット:ペダルをこいで走らせることもできる原動機付き自転車」と定義されている。なお「モーター」は、発動機やエンジンという意味が適切であるが、いわゆる電動機としての「モーター」は正確には「electric motor」と表記されるようだ。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です