「関戸橋フリマ」でハードテールMTBのカーボンフレームを買ってしまったので、リジッドフォークに1×2スピードという仕様で組み上げ、グラベルを含む秋の大弛峠越えへ行ってきた。
関戸橋でフレーム入手
多摩川にかかる関戸橋の横の河川敷で、春と秋の二回、自転車部品・用品のフリーマーケットが自然発生する。秋の回が10月19日にあり、手元の余剰パーツを放出しに友達と出かけた。
持ち込んだガラクタはぼちぼち売れて荷が軽くなったのだが、他のブースを覗いていたら、一本のMTBフレームが目に留まった。GIANTのカーボン26インチMTBのものだ。自分に概ね合ったサイズで、前三角も頭をすっぽり通してちょうど両肩で担げるくらい。ケーブルもトップチューブ上通しなので担ぎの邪魔にならない。ディスクブレーキにも対応。ざっと見たところヤバそうなダメージもない。2024年の今、これだけ条件の揃ったカーボンフレームとの遭遇はかなりレアだ。サスペンションフォークとセット売りだったのを、交渉してフレームだけ安く譲ってもらった。モデル名はMCM。2002年くらいのXCレーサーらしい。
とりあえず組み上げる
20年以上前のカーボンフレームって、大丈夫なのか? 一般論としては「やめといた方がいい」が正解だろう。一方、カーボンは保管状況などによりコンディションに差が出るとされ、使用年月だけでは判断できない部分もある。自分の身の回りにも、同じくらい古いカーボンフレームのMTBに乗っている人がちらほらいる。願望に基づく確証バイアスに流されるのは危険だが、まずは組んでみてテスト、ということになった。
柳サイクルにオーダーしたCozmoの登場により出番が減っていたCoveのクロモリMTBをバラし、部品をMCMに移植していく。どちらも26インチ車で各部の規格も共通なので、ほぼフレームを入れ替えるだけだ。後輪は普通に26インチ、前輪は27.5インチ(いずれもQR)。ネットでは詳細なジオメトリーの値は見つからなかったが、断片的な情報を参考に、手元にあった425mmのクロモリフォークを入れてみた(ヘッドパーツ作業はショップに依頼)。
駆動系に関しては、Coveに採用していた1×10は要らないと判断。完全なシングルも考えたが、平地と山の2モードを切り替える2速とした。友達が似たようなセッティングでヨーロッパ6000kmやピレネー山サイ960kmをやっていることにも影響を受けている。前32T、後ろは余っていたコグのうちで一番マシそうな18Tと21T。
試走してみるとなかなかいい。ステアリングの挙動は、登り~平坦~下りのどの局面も一通りこなせそうな印象。BBの地上高は310mmくらいと、自分の好みの上限付近。チェーンステーがCoveの420mmから伸びたこともあり、漕ぎを入れずにフロントを大きく上げるのは前よりちょっと難しくなった。トップチューブはCoveの560mmから540mmに短くなり、前輪のダイレクト感が増した。総じてバランスのよいATB(all terrain bicycle=全地形自転車)といえそう。
軽量化
近場で乗り回した範囲内ではカーボンフレームが異音を立てたりすることもなかったので、(様子見を継続しつつ)本腰を入れてこの自転車を活かすことにした。せっかくの軽い車体となれば、やっぱりもっと軽くしたい。といってもあくまで山遊びの相棒、恐る恐る扱うようなやつにはしたくない。ポイントは、自分のやりたいことを見定め、そこで要らないものをそぎ落とすこと。2速化もその一環だ。最初はリアディレイラーの流用でチェーンを張っていたのを、シンプルなテンショナーに交換。3-4mmの水平方向の遊びを利用して2枚のコグのどちらでもいける位置にセットする。
仮に入れた425mmのフォークもジオメトリー的に好感触だったので、同等の寸法の軽量フォークを探して手配した。いつまで流通するか分からない26インチMTB用パーツを早めに確保しておく、という意味(言い訳)もある。左右のフォークレッグがカーボンファイバー、他はアルミの品(それなりに名の知れたブランドのものと中身は同じらしい)。コラムを少し切って755g(スターナットなし)。
ハンドルバーやステムは、あまりカーボンにしたいと思わない。なにかとよくいじる箇所にもかかわらず締め付けトルクの管理に神経を遣い、破損した際の被害の形態もよりヤバそうだからだ。前後タイヤもチューブレス(レディー)化すると重量が削れるし低圧運用もできてよいのだが、一定期間の経過で起きるシーラントの揮発・固化が「頻繁にこいつに乗らなければ」というプレッシャーを生むなどの負の面もある。車体だけでなく気持ちが軽いことも大事なので、この辺のカスタマイズは今のところ保留。
フィールドに連れ出す
暫定的な仕様が固まったMCMで、ちょうど山が色づく頃と思って大弛峠(山梨・長野県境)へ出かけた。前日の夜に特急に乗って塩山の旅館に泊まり、たっぷり朝食を頂いてスタート(行動食も十分に買い込んでおいた)。
峠へは長い舗装路のヒルクライムだが、変化に富んでいて飽きなかった。MCMのギア比は1.77と1.52で、外周が同じくらいの700x25Cロードでいえばインナー34Tでリア18Tと22T(インナー39Tならリア22Tと25T)に相当。案の定ほぼ1.52しか使わず、もうちょっと軽くてもいいなと感じた。といっても座ったり立ったりしながらユルユルと登れはするし、変速操作を考えないことはやはり気軽でよかった。ステアリング周りのセッティングも上手くいったようで、低速の登坂での前輪の勝手な倒れ込みなども、これといって気にはならなかった。
峠(標高も高いし風が通って流石に寒い!)を越えて長野側、道は岩がちなグラベルで始まる。(相対的に)短いトップチューブや大きく寝ていないヘッド角などによる前輪のダイレクトな接地感は、荒れた下りでは上半身へ伝わる衝撃として表れた。特に前傾のきついポジションではないし、なるべく脚で乗るようにしていても、手に痺れが生じることがあった。フォークやハンドルバーやグリップの形状も関係しているかもしれない。チューブレス化していないタイヤのパンクを嫌って空気圧をあまり下げなかったせいもあるだろう。できれば改善したい点の一つだ。
秋というより冬の気配が迫る山から里へと下りて道がほぼ平坦になると、ハイ側のギア比1.77の進まなさが流石にじれったく感じられた。他の2台の26インチシングルMTBは大体1.8-1.9にセットしてある。2.0までいくと自分の脚では平坦な未舗装路(特に草地など)でモッサリ感が強くなる。MCMのハイギアも舗装路専用にはしたくない。この辺のバランスが悩ましく、面白い。
記事投稿時までの変更点
大弛越えはMTB要素は薄いので、後日、馴染みのある里山トレイルにも行った。20年もののフレームはそこでもバラバラにならなかった。これら二つのフィールドで得られた発見を活かし、少しパーツの変更などを行った。
- ステムを80mmから90mmへ。トレイルの登りで窮屈さを感じたため。下りもかえってこっちの方が楽かも?と思っているが、検証はこれから。
- グリップをODIのものからSQlab 70X(サイズS)へ。必要なところにクッション性や「指のかかり」を持たせつつ細身に作られた品で、手の小さい自分にとても合う。
- シートポストを割とEastonのアルミのやつからカーボン使用のノーブランド品へ。シンプルに軽量化。
- フロント32Tにインナー28Tを加え、ギア比32/17=1.88と28/21=1.33のディングルスピードに。駆動系の重量は増えたが、ちょろっと乗り回した感じは良好。
ちなみにチェーンステイは初め430mmと思っていたのだが、どうも425mmっぽい(ちゃんと計測するのは意外と難しい)。だとすると、上記とほぼ同じギア比の30/16と26/20でテンショナーなしのディングルが組めるかもしれない。これができたらさらに軽くシンプルで壊れる箇所の少ない自転車になる。近いうちに試してみよう。
11/15追記:軸間固定ディングルの狭き門
上述した「30/16と26/20でテンショナーなしのディングル」を試してみた。結果は、ギリギリいける感じ。26/20はややタイトながら引っかかりはほぼなかったが、30/16はギチギチで、16Tコグをシングル専用の新品から中古スプロケットをバラしたものに交換したら微かにマシになった。30Tのリングは新品なので、これがいくらか摩耗すればよりよい具合になりそうだ。ただしいずれも継ぎ接ぎの中古品チェーンを使っての話である。全て新品だったら30/16は成立しないだろう。
歯数の和が同じになるチェーンリングとコグのセットを2通り用意しても、実際にはリングが大きい方がチェーンは張られた状態になる。どちらの組み合わせでもテンションがキツ過ぎずユル過ぎもしないチェーンステイ≒軸間長(BB~リアハブ)はごく限られている。425mmはわずかに長い。MCMでディングルを実現するには、エキセントリック(=偏心)BBを使って軸間長を424mmあたりに変えるなどするのが正攻法といえそうだ。自分もいずれそうするかもしれない。
当面は、部品の摩耗も利用しながらの強引ディングルを楽しみたいと思う。テンショナーを使わないスッキリ感、ダイレクト感、軽快さはやはり素晴らしい。