前回の記事では、エティエンヌ・ルイ・ブレーを参照し、球体の自転車建築制作に取り組むことをお伝えした。しかし、現在勤務している女子美術大学で2024年11月28日から開催される助手展に向けて、別の自転車建築の制作を進めていたため、今回はその作品について先に紹介したい。
門田が展示する作品のタイトルは「Light on Earth #1」。
この作品は、8月のワークショップで使用した「moving home」を発展させたものである。
鑑賞者は椅子に腰掛け、ヘッドホンを装着して映像を見る形式となっており、視覚と聴覚を通じて空間と風景の関係性を探る試みとなっている。
キャプション掲載文
街は、いつかの、そして誰かの記憶の総体である。
本作は、昨年から門田が制作を続けている「自転車建築」から派生した作品であり、建築的美意識を基盤に、環境情報の受け止め方のデザインをテーマとしている。展示物は自転車に乗りながら街の風景を動画撮影したものである。 箱とスマホは、風景を二重に切り取り、内外を区別し、風景をより、見るものへと対象化する。また、空間は見定める情報から滲み出る無形を受け止める器となる。
望遠鏡のように遠くを観察し、顕微鏡のように近くを見つめる視点が交差する中で、鑑賞者にこの世界の細部を見つめることを促す。
制作背景
制作の動機は、今まで自転車建築で継続して実践してきた「空間が風景を取り込むこと」の意味を深化させることにある。窓の向こうを眺める感覚と、スマホ(モニター)を見る体験を重ね合わせ、建築とカメラの”あいだ”のような物体となることを目指した。
本作の展示形式については悩んだ。自転車に載せた状態で展示する方法も考えたが、鑑賞のしづらさに加え、今回は展示可能なスペースが限られていたため、模型を台に載せた形式を採用することにした。
本作の特徴
本作がこれまでの作品と異なるのは、鑑賞上重要な要素として音情報を扱っている点である。スマホによって記録された視界の外側の音情報によって、運動と時間がリアルに感じられ、鑑賞者の想像を掻き立てる。
椅子は鑑賞者にスマホの画面を至近距離で見させるために、設置した。椅子にはLightを想起させる黄色い球体を装飾的に取り入れ、模型と台を含めて家具のような統一感を持たせた。模型の形状は、ジェームズ・タレルやジョセフ・アルバースの作品に見られる視覚性を参照し、光と影がコントラストに際立つように、空間に段差を設けた形状に仕上げている。
助手展は明日28日から開催するので時間があればぜひお越しください。
門田は杉並キャンパスで展示をします。
■杉並キャンパス(門田は杉並で展示)
会場 :1号館1階 110周年記念ホール
会期 :11月28日(木)〜12月9日(月)
休館日 :日曜・祝日・12月6日(金)~12月8日(日)
開催時間:10:00~18:00
■相模原キャンパス
会場 :1号館1階 Joshibi SPACE 1900/2号館1階 SWITCH Labo、2階 221~224教室前/1.5号館
会期 :11月27日(水)〜12月4日(水)
休館日 :日曜・祝日
開催時間:10:00~18:00