Visions in Motion 20:うごく・うごかす・うごきをみる

展覧会開催期間の半分を過ぎ、現時点で個々の作品についての個人的な思考を巡らしてみる。3作品に共通する「うごく・うごかす・うごきをみる」というキーワードは、作品ごとにその役割が一致しているわけではなく、どれもが絡み合って成立している。

かんしょうこう

会場の中では唯一暗い部屋で鑑賞する「かんしょうこう」は、構成要素がシンプルな作品である。光と縞模様と白い物体に影が落ちている状況を観察することを促している。ガラスケースの中で風に揺れる布以外は、吊られたり置かれたりして静止している。水平に光を当てているため、物体表面の陰影を消し去ることを前提と設計している。その表面に縞模様とその影が落ちるため、縞と縞が干渉する状況を作っている。この現象は「モアレ」と呼ばれ、物体表面に沿って現れ、かつ鑑賞者の視点によって変化する。我々が日常見ている物の存在について、色や質感や機能といった暗黙知によって知覚しているが、一旦それらの情報を排除したときに起こり得る、物体を面のみで捉えている(面を目で触れるデッサンのような)体験を揺り動かしているのかもしれない。

スマホスタジオ

鑑賞者のスマートフォンで録画する「スマホスタジオ」は、台車にセットして2分間という鑑賞体験を、誰もが抗いようもなく拘束される。スマホのカメラの特性によって多少の画角差はあるものの、作者の意図した構図で映像が記録される。現代人が常に携帯しているであろうスマホを目の前にしながら、手放しで鑑賞するしかないこの体験は、老若男女を問わず等しく与えられる。故に視点を工夫しながらじっくり観察する時間が生まれ、まさに作品設計としてアイロニカルなプラットフォームとなっている。

うごキスト

iPadのカメラとディスプレイを入出力のプラットフォームとしている「うごキスト」は、鑑賞者の介入があって初めて成立する作品である。近づいたり右へ左へ動いたり、手を振ったり、鏡を見るようにディスプレイに現れる自身の変化を確認しながら鑑賞する体験が提示されている。決して誘導するような言葉はなくとも、動かずはいられない、動かされてしまう、さらには次の効果が切り替わる鑑賞時間までもがコントロールされている。受動と能動のバランス感が取れた体験がそこにある。

スイトピア×イアマス連携展示
「うごキズム ~うごく・うごかす・うごきをみる~」

2024年9月28日㊏―11月4日㊊㊡
開場時間:9時―17時(入場は16時30分まで)
休館日:毎週火曜日、10月16日(水)
会場:大垣市スイトピアセンター アートギャラリー(学習館1階)

観覧無料

主催:公益財団法人 大垣市文化事業団(大垣市指定管理事業)
   情報科学芸術大学院大学[IAMAS]

問合せ:大垣市スイトピアセンター(大垣市文化事業団)
    岐阜県大垣市室本町5丁目51番地 TEL. 0584-82-2310
    https://www2.og-bunka.or.jp/event/data_1352.html

運動体設計メンバー:赤松正行、桑久保亮太、瀬川晃、榊原礼彩、芹澤碧、中村駿

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