Cycling Edge 23: フライブルク

8月から9月にかけて南ドイツに滞在してので、フライブルク(Freiburg)在住の小畑和香子さんを訪ねた。小畑さんは「世界に学ぶ自転車都市のつくりかた」の著者の一人であり、担当されたドイツの章での「ドイツは自転車先進国ではない」との衝撃的な書き出しを疑問に思っていたからだ。そこで連絡を取ったところ、快く時間を取っていただき、自転車に乗って街を巡ることになった。感謝申し上げます。

朝、フライブルクの駅前に小畑さんがカーゴ・バイクUrban Arrowで登場。筆者は荷台に載っていたBromptonをお借りして走り出す。まずは歩行者・自転車の専用橋を渡って駅の反対側へ。そこは大きなリング・タワーの駐輪場。2段のラックに整然と自転車が並び、内周部は大型自転車が置ける。カフェや自転車ショップ、自転車レンタル、自転車ツアー・デスクなどが併設され、多くの人で賑わっている。

隣接する緑豊かな公園では朝市が開かれている。色鮮やかな野菜や果物が並び、自転車で訪れる人も多い。その後に市街地を走り始める。路面の良い舗装道路には白線で自転車レーンが示され、その外側に駐車・駐輪スペースがあり、さらに歩道がある。交差点では目立つように自転車レーンが赤く塗られている。幅が狭く専用レーンがない箇所があるものの、全般的に整備されていて走り易い。

小さな川沿いの側道に入ってカーゴ・バイクに乗り換える。流麗なデザインの車体は長く重いものの、電動アシストなので意外と漕ぎ易い。前後輪の間隔が長い二輪の操舵感にもすぐ慣れる。もちろん荷台には多くの荷物が載り、子供2人が並んで座れる。これが自転車シェアリングとしてスマートフォンで簡単に利用できるのは羨ましい限り。小畑さんもお気に入りで、頻繁に利用されるそうだ。

この日は休日だったこともあって、快晴の空の下、さまざまな自転車に乗った人と行き交う。川辺で水遊びをする人や公園で寛ぐ人も多い。小畑さんのルート選定のおかげもあって、快適に流れるように街を巡る。自転車レーンは明確で、スムースに右折や左折できる。物理的に分離された自転車道やソーラー・パネルを屋根にした箇所もある。

やがて旧市街に差し掛かり、その脇に自転車を停めて、そぞろ歩き。中世から続く古い街並みと石畳、300年かけて建設された大聖堂、ヨットを浮かべ足をひたす清流の水路(Bächle)など観光地として有名なだけあって、多くの人で賑わっている。パンからはみ出るソーセージ(Lange Rote)を頬張り、オーガニック・ランチにはラドラーを注文して一休み。

旧市街の後は、余興ながら知人の大柄なドイツ人をカーゴに乗せて駅前に戻る。総重量は200kg近いはずで、流石に漕ぎ出しがふらついてしまう。走り出せば安定しているものの、慣性が大きいのでブレーキの制動力に不安を覚える。それでもなんとか走り通せたのは、整備された道路のおかげだろう。これが東京なら、すぐに事故になりそうだ。

最後に小畑さんのご自宅に立ち寄らせていただく。緑豊かな庭やベランダを備え、カラフルな建物の屋根はソーラー・パネルだ。この辺りのヴォーバン地区は同じ建築デザインのパッシブ・ハウス立ち並んでいる。小畑さんは環境保護に関心が高く、そのひとつが自転車であることが伺える。市内の自転車環境についても社会に働きかける活動家であり、そのより良いエッジ(境界)を拡げようとされている。

さて、最初の疑問に戻れば「ドイツは自転車先進国ではない」ではない。それは単なる煽り文句だ。フライブルクは環境保全に意欲的であり、早くから自転車の利用促進に取り組んでいる。程度の差があるにせよ、他のドイツの地域でも同様に感じた。しかし、それでもまだ十分ではないとの思いが、その書き出しに現れている。僅かな滞在がうらまれる。感じ、学び、行うことはまだまだあるに違いない。

「ひとりの住民として最初に断っておくが、ドイツは自転車先進国ではない」

「世界に学ぶ自転車都市のつくりかた」小畑和香子

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です