8月上旬に房総半島に出かけた。猛暑日がなく涼しい街と言われている千葉県の勝浦での避暑だ。実際にも朝夕の涼しい潮風に吹かれると楽園気分。しかし昼間は暑い。潮風もぬかるんで気持ち悪くなる。気象データでは東京の最高気温が35℃を超えた日に、勝浦は30℃少々だったりする。しかし、勝浦でも35℃近くになる日もある。地球沸騰化で「涼しい」の基準がおかしくなっているとしか思えない。
しかも勝浦周辺は自転車の走行環境は悪い。道路はアップダウンがあり、曲がりくねり、そして道幅が狭い。路面に描かれる青い矢羽は気休めでしかない。極め付けはトンネルで、逃げ場がなく恐怖感しかない。これが「誰もが安全・快適に走行できる環境を備えている」ナショナル・サイクル・ルートの太平洋岸自転車道なのだから閉口してしまう。国土交通省にダマされた気分。
そこで九十九里浜に向かった。昨年、成田から海へ向かった際に走り易かったからだ。そこで九十九里浜の中央付近までクルマで移動し、そこからBromptonで海岸線沿いに北東に向かう。この辺りの太平洋岸自転車道である県道30号線も、青い矢羽が描かれているだけの狭い道でしかない。危険な茶番に付き合う義理はない。そこで早々に海岸に向かう。道路がダメなら砂浜を走れば良い。
しかしファット・バイクにはほど遠いBromptonでは、砂浜を押し歩くことすらままならない。少し引き返して、海岸線に平行した砂利道に入る。これまたグラベル・バイクなら楽しいだろうが、Bromptonなら振動に耐え、転倒を避け、冷や汗をかきながらの苦行になる。それでも波打ち際を真横に見ながら走るのは楽しく、一部ながら舗装された箇所もあるのは嬉しい。
やがて道は途切れ砂浜になるので、海岸線を離脱して県道30号線に入る。青い矢羽が描かれただけの狭苦しく危険な太平洋岸自転車道だ。民家が続く風景も退屈でしかない。しかし、少し我慢すれば再び海岸線沿いに戻ることができる。しかも今度は舗装道路で快適極まりない。これでこそナショナル・サイクル・ルートと名乗る価値がある。映像は復路で九十九里浜の北東の端あたりから始まっている。
なお、乾いた砂にはタイヤを取られてしまうが、波打ち際の濡れた砂なら自転車で走ることができる。舗装道路とも砂利道とも違い、少し沈み込む柔らかな走行感が心地良い。押し寄せる波を横切り、浅瀬の鏡面効果を楽しむ。見渡す限り続く砂浜を走り続ければ、道路は不要だと思えてくる。その様子は昨年の映像に残っている。今回は海水浴で賑わっていたので、波打ち際には入らなかった。
このように九十九里浜は砂浜、舗装道路、砂利道と変化に富んでいて楽しめる。クルマが侵入しない浜辺沿いの道は安心して走行できる。しかし道幅が狭く交通量が多い自動車道を避けられないのが残念。このエッジ(限界)は少しずつでも改善されるだろうか。昨年は中央付近、今回は北東部、そして南西部が残っている。国内最長、全長66kmの九十九里浜を、いつか安全な一本道として走りたい。