Hangar (7) – 解体から始まる自転車格納庫

Hangarとして選ばれる場所がどのような基準で選定されたのか、その決定プロセスや理由を明確にすることは重要である。これについて、様々な地方自治体における自転車駐輪設備のほか、自転車道の整備において、場所の選定が積極的な姿勢で臨まれていないことが多々ある。多くの場合、理想的すぎるか、現実を見ていないかどちらかである。

私達が次のHangarを作る場所は、兵庫県神戸市の六甲山の麓にある。六甲山はひとつの山というよりも、六甲山系全域のことを指すことが多い。そのうち、Hangarが位置するのは六甲山系の中のひとつ、再度山(ふたたびさん)を臨む神戸市街地である。

周辺の地図(地理院地図より)

この場所でのHangar設置に向けた具体的な準備状況は、既存の建物の内装を解体していく、分解作業が行われている。これからHangarに適した設備を目指して、施工がされていく。実際に自転車で周辺を走行したり、Hangarに自転車を格納したりすることで、現場における目線を中心にプランが作られている。

この建物はもともとは住居向け長屋作りの木造平屋建築である。現在は居住には使用されていない。築年数は不明だが、壁や建具の状態はかなり傷んでいる。そのため柱などの構造を残して内装をやり直す施工を行うところに、Hangarとしての機能をインストールしていくことになった。

解体作業風景

この場所が持つ地域的な特性としては、前述の再度山と市街地との境界線に位置するような地帯にある。海と山とが接近した地形の狭い平地に、ひしめき合うように建物が建つのがこの地域の特徴である。それはつまり、市街地にありつつも、すぐにヒルクライムコースにアプローチすることもできることを意味する。

六甲山という地域はこの境界線において歴史をもっている。江戸時代から明治時代へと日本の政治や文化が変化していく中、神戸は国際港としての役割をになっており、外国人居留地が作られた。そして、そこに住まう人たちによって、西洋式の登山が行われるようになった。いわば、登山の近代化が始まった場所でもある。

また、六甲山は日本における最初の公式ゴルフ場として認定された。それが現在の「神戸ゴルフ倶楽部」となっている。山荘を建てて六甲山をレクリエ-ションの場として利用することも行われた。このような、日常と非日常との境界線にあるのが、近現代における六甲山麓の地域特性とも言える。

自転車愛好家にとっては、六甲山は人気のあるヒルクライムコースでもある。つまり、自転車で走る道としてはすでに一定の支持がある。そしてここに、自転車を基盤として住まう場所であるHangarを作ろうと考えたのは、この地域の歴史的な経緯からも、この場所を外から訪れる人にとっての自転車格納庫とすることに、価値が生まれると考えたからである。

Hangarが山と都市との間を容易に行き来できるような、その境界線を曖昧にしていくようなことが、この場所にHangarを作る主たるテーマになるのではないかと考えている。

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