本連載は建築と自転車を組み合わせた表現を通じて建築の静的なイメージを覆し、建築と移動が持つ新たな可能性を探求している。引き続き、自転車、光、造形的な模型・物体の相互作用に焦点を当て、どのような表現が可能かを探る。
前回に引き続き、門田家の部屋を模型化し、自らの生活空間に風景の映像を重ね合わせる手法の実現を目指す。
今回は360°カメラを用いて検討を行った。通常、建築模型は縮尺に基づいて作成するが、360°カメラのサイズに合わせてノンスケールで作成した。
スチレンボードを使用して大まかな形状検討を行い、ドアの覗き穴から映像がどのように入射するのか確認した。今後、段階的に模型のサイズ、素材、形状の精度を高めていく。
自転車の荷台に載せられるサイズにするため、玄関からキッチンまでの空間を模型化するにとどめた。
抽象的な空間とは異なり実空間を模した空間は、より人や生活感が身近に感じられ、喚起される情報が異なる。手垢のついた部屋の質感を表現することで、今までの空間とは異なるベクトルのエモさを開拓できそうだ。