Visions in Motion 16:反転

自転車を漕ぎ出せば絶えず、風を切る音や、滑走するタイヤと路面の摩擦、ペダルからチェーンを駆動する音、振動が全身に伝わってくる。他方で、池や水田など水面に映る景色と遭遇し、足を止めれば、風がない、静止する世界にいる、微動する自我が顕在化する。

映像:四万十川(高知):沈下橋
映像:仁淀川(高知):沈下橋

水面に映る景色を「水鏡」(みずかがみ)という。風がなく波が立っていない水面は、より平滑に反転した現実を映しとる。水面に揺らぎがあるように、人の意識の揺らぎが際立つ。凪は音もなく、世界全てが静止している時間を感じる。

写真:自宅近くの水田(昼)
写真:自宅近くの水田(夜)

反転といえば、このクリティカル・サイクリングでも度々話題に上がる、荒川修作&マドリン・ギンズが思い出される。彼らの作品に没入すると空間認識や常識を根本から覆し、疑問を投げかけられる。概念自体を知覚を揺さぶりながら拡張する試みである。

養老天命反転地(出典:Reversible Destiny Foundation

壮大な作品も然り、日常出会う水たまり一つ、小さな反転の積み重ねが、視点を変えるきっかけなのだと言える。

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