自転車建築(14) My Living Home Ⅰ

本連載は建築と自転車を組み合わせた表現を通じて建築の静的なイメージを覆し、建築と移動が持つ新たな可能性を探求している。引き続き、自転車、光、造形的な模型・物体の相互作用に焦点を当て、どのような表現が可能かを探る。

前回まで連載していた自転車建築キットは現在もブラッシュアップ中だが、一段落ついたので、ここで新たな自転車建築プロジェクトをスタートする。

今までの自転車建築に用いた模型はシンプルな形状が多かった。それは建築要素、つまり建築における床、柱、壁、天井などを映像にどう結びつけるか純粋に描き出したかったからである。しかし、前回の「Your Living Home」の制作を通じて、記憶をインテリア化するならば、物理的な雑多な住まいの環境こそが記憶そのものであり、それを利用しないすべはないだろうと思い至った。

そこで、私が現在住んでいる部屋を模型化し、自らの生活を自転車に載せることにした。

住まいの3Dモデル
ドアの覗き穴から映像が投影されるようにしたい。

私は今、2DKのマンションに住んでいる。私が住むことで私の人生や考えの痕跡が刻まれていく。そうした時間の堆積として家を捉える眼差しを、自転車と映像によって補強する。

各部屋の空間形状、素材、空気感からどのようなシーンを生み出せるか、簡単な模型を制作し検討を進め、最終的には精密な模型を制作し、私の姿と風景の映像を投影する表現にしたいと考えている。

さらに、本作では模型を荷台に固定する方法を検討したい。これまでの自転車建築では走行中の振動で映像がぶれることを容認していたが、今回はダンパーなどの制振装置を制作し、解消したい。つまり、模型と自転車の接点の設計、建築でいう基礎にあたる要素のデザインを行う。

ちなみに本作はスマホと360°カメラ両方用いて制作を進める予定である。スマホによる空間の平面的な切り出しと360°カメラによる空間の記録、この両方からアプローチする。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA