フォーク後ろ寄り積載で低速時のヨロヨロを解消

前回の記事では「前荷ism」という言葉をでっちあげて自転車の前方への積載とジオメトリーとの関係を掘り下げたが、一口に「前荷」と言ってもどこにどう積むかで違いが出るということも見えてきた。今回はフォーク積載に注目し、野営あり&未舗装ありのツーリング≒バイクパッキング向けセットアップを検討する。

フォーク後ろ寄りに積んでみてびっくり

ここ一年くらいの間に度重なるフォーク交換を経てきた自分の赤いリジッドMTB。今はSurlyのBridge Clubフォークが入っていて、その後ろ寄りに三連ダボ穴が空いている。この位置への積載は試したことがなかったので、手持ちのSalsa Anything Cage HDを装着し飲料2リットルを左右に1本ずつ積んでみた。結果、低速でヨロヨロしない良好な乗り味が得られた。これには驚いた。

フォーク脇・後ろ寄りに2リットル×2で快適

この自転車は現在ヘッド角が約70°で、低速時にはフロント周りの勝手な切れ込み(「ホイールフロップ」と呼ばれたりする)がまあまあある。これは下半身主導で車体を寝かして曲がる動きには合っているし、その度合いが極端でなく、また荷物が絡まなければ楽しいものだ。しかし昨年の秋にバイクパッキングに出かけた時は砂利道の登りで強い切れ込みに悩まされた。当時はフォークとホイールの組み合わせが違っていてヘッドが今より少し寝ていたが、何よりフロントラックにミニパニアを引っかけてフォーク脇の前方に配置したのが良くなかったと思う。

フォーク脇の積載、前寄りと後ろ寄りの違い

フォーク脇・前方にミニパニア×2は失敗

昨秋のフロント積載のパニアも、中身は寝袋など軽い物だったので飲料2リットル×2と大きく違わない。しかし重心はステアリング軸より前に「持ち上げられた」状態にあり、いったん前輪が傾くとそちらへ「落下する」。ステアリング軸の延長上とタイヤ接地点のズレ(トレイル)による抵抗も摩擦係数の低い未舗装路ではずっと弱くなるから、そのぶん腕で押さえ込まなければならなくなる。石ころなどで弾かれた前輪はすぐに横を向く。

一方、フォーク脇の後ろ寄りに配置した荷物は最初から低い位置に「ぶら下がっている」ので、(タイヤと路面の摩擦に依存せず)フロント周りの切れ込みに対する抵抗として働く。空荷の時よりもむしろ切れ込まない。近所にある滑らかな砂利の坂もフラフラせず楽に上れたし、土の上でゆっくり両手離し走行することもできた(公園内で周囲の安全を確認した上で行った)。これは腕をリラックスさせられるということだから、未舗装路も走るツーリング車としてはとても優れた特性だ。こんなに違うとは思わなかった。

どんなことが言えそうか

フロント積載にはハンドルバーバッグ(フロントバッグ)の類なども関わってくる。現代的な品なら普通はステアリング軸より前に配置されるので、切れ込みを強めることはあっても緩和はしてくれない。ハンドルバーバッグ類と合わせて使うことを考えると、フォーク脇の積載は後ろ寄りがベストなのではないかと思う。ヘッドが相対的に寝ているMTB系ならなおさらだ。

参考のためSurlyのラインナップを一覧してみると、Karate Monkey、Bridge Club、Big Easy、Krampusのフォークはトリプルダボ穴が後ろ寄りに空いている。

ファットバイク(Ice Cream Truck、Pugsley、Wednesday、Moonlander)用のフォークも同様だ。

Ogre、Troll、ECRのフォークは後ろ寄りと前寄りの両方にトリプルダボ穴がある。

これだけの種類のフォークがみな後ろ寄りトリプルダボ穴を備えているわけだ。なお現行型Disc Truckerのフォークだけはトリプルダボ穴が真横に空いている。これはフォークの幅やパイプの径および形状の関係で後ろ寄り積載が難しいからかもしれない。

Disc Trucker fork

未舗装路での運動性能を重視するバイクパッキング向けの積載では、ラックの有無を問わず、第一に前三角とその周辺をしっかり活用し(ガンガン担ぐ想定だとまた違う)、そこに収まらないものをバランス良く、かつ管理が煩雑にならない範囲で分散させるのが理想だ。このバランスにフォーク脇の荷物の位置が及ぼす影響は、パッと見あまり変わらないようでも実はかなり大きい。もちろんこれまでに書いてきたように車体のヘッド角にもよるし、片側に1kgも積まないなら気にならないかもだが、重くなると挙動に差が出ることは知っておいて損はないだろう。

積載は全体のバランスと構成・運用のシンプルさが大事
動画も作ってみました(撮影:Kaede)

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