超音波でカーボン検査

カーボンは極めて軽量で振動吸収性のある素材なので、ロード・バイクを中心に人気が高い。ただし、衝撃には弱く、事故や落車などがあれば損傷を受けやすい。しかも、目視や触診ができる傷ではなく、素材の内部に歪が生じることも多い。これは素人には判断がつかないので、専門業者に検査を依頼することになる。幸か不幸か、TrekのMadone 9.9を検査したので、そのあらましをお伝えしよう。

今回利用したのはカーボンドライジャパン(以下、CDJ)の超音波深傷診断サービス。超音波診断機によって内部のカーボン層に損傷があるかどうか調べる非破壊検査だ。ビデオに見られるように、聴診器のような器具でカーボンの表面をなぞる。内部に傷があれば、そこで超音波が反射するので、異常が検知できるわけだ。正常であればカーボンの厚みを示し、傷があればより小さな値となる。

超音波探傷検査の垂直探傷法で表示される探傷図形の例(Wikipedia

送付された報告書によるとフロント・ホイルリア・ホイールシートポストフォークフレームハンドルバーの検査が行われ、その結果はいずれも問題ないとのこと。自転車を預けていたショップからCDJへの輸送を除けば、検査自体は短期間で行われたようだ。検査費用の総額は69,000円。検査のためにバーテープを取り外すので、新品のバーテープ代も必要であった。

検査の様子を見学したい旨を申し入れていたが、これは叶えられなかった。しかし、検査についての質問はメールで回答をいただいたので、以下に掲載する。質問文は簡略化しているが、回答文は改行を整えただけで原文のままである。どの程度の密度で検査が行われたのが気になるが、CDJによれば「全体をまんべんなく診断する」とのことだ。検査漏れした箇所がないことを祈ろう。

ー 実施された超音波探傷診断の方式を教えてください。

パルス反射法、垂直探傷法になります。

ー 目視や触感では分からない傷とは、どのような傷ですか?

表面に傷が無い場合でも層間剥離を起こしている場合があり、その場合も損傷ありとの回答をします。

ー 報告書での検査箇所と検査箇所の間に傷があっても発見可能ですか?

全体をまんべんなく診断するとお考えください。問題が無ければ代表地点としてフレームなら30箇所の測定データを抽出します。

ー 検査で得られた波形や数値から、傷をどのように判断しますか?

損傷があれば、周辺とは明らかに異なる波形を示します。大きさによって、ボイド、層間剥離等推測します。異常データの判定については弊社ウェブページで公開しています。

ー 超音波探傷診断を依頼される事例を教えてください。

主に交通事故が多いです。車とぶつかったが外傷が無いので、心配。もしくは傷があるので、カーボンに損傷があるかどうか知りたい。また、損傷があるのであれば、補修にどのくらいかかるのか。等々。保険会社や運送会社からも診断依頼があります。

ー カーボン製品以外の検査も行われていますか?

測定機器の基準値を変更する必要があるため、カーボン以外の製品については対応しておりません。

カーボンドライジャパンへの質問と回答より

これまでにも風で自転車が転倒したことや、走行中のミスで転倒したことがある。そして、今回は輸送中の事故で衝撃がかかったので、検査を依頼したわけだ。結果的に無傷であったので、まずはひと安心。意外とカーボンは丈夫だと思ったが、次にも損傷を免れるとは限らない。自転車を大切に扱い、安全運転を心がけるべきなのは言うまでもない。

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