電動アシスト自転車には専用コンピュータが搭載され、モーターの制御などを行うプログラムが実行されている。ところが、プログラムにはバグ(欠陥)が付きものであり、これをゼロにすることは困難だ。ただし、見つかったバグに対しては、問題を解決した新しいファームウェアが提供される。これは新しい機能を追加するためにも行われる。そこで、常に最新のファームウェアを利用するのがキホンだ。
ミヤタのRidge Runnerは、シマノの電動アシスト・ユニットSTEPS E8080を搭載している。そのファームウェア更新情報によれば、2017年11月以来5回に渡ってアップデートされており、そのいずれもが「不具合修正」だ。つまり、古いファームウェアであれば、何らかの「不具合」があることになる。それでは、自分が乗っている自転車のファームウェアのバージョンは何だろう?
ところが、これが実は分からない。何しろE8080のファームウェアを扱うには、有線でPCに繋ぐ必要があるからだ。この専用ユニットSM-PCE1は2万円ほどする上に、今どきPCを持っているとは限らないから、かなり敷居が高い。Dura-Ace Di2では、数千円のワイヤレス・ユニットとスマートフォンで接続しているので、そうあるべきだろう。いや、スマートフォンへの接続機能はデフォルトで備えるべきだ。
さて、幸か不幸か、ショップでは上手く接続できなかった。そこで、専用ユニットを貸していただき、自宅で取り組むことになった。まず、ディスプレイ・ユニットを外す。2本のケーブルが挿さっているポートはそのままにして、もうひとつ空いているポートのダミー・プラグを外す。これはプラグ差込工具があると便利。そして、専用ケーブルをポートに差し込む。
専用ユニットのUSB端子はPCに挿すが、今どきPCは持っていない。そこでMacBook ProをBootCampして利用する。見にくいフォントや情けないアイコンが現れると、いかにもエンジニアリングの世界に突入したようで、気分が盛り下がる。とは言え、嘆いていても仕方がないので、シマノのサイトからE-Tube Projectアプリケーションをダウンロードして、インストールする。
E-Tube Projectが起動すると、これまた懐かしいスキューモーフィズムの世界が現れる。これらの疑似立体アイコンからE8000をクリックする。次にメニューから「接続確認」を選ぶと、接続されているユニットが表示される。Ridge Runnerの場合は、ドライブ・ユニットのDU-E8080と手元スイッチのSW-E6010-L for Assistが繋がっている。E8000系とE6000系が混在している。
それではいよいよ本題、メニューから「ファームウェアアップデート」を選ぶ。これで各ユニットのファームウェアについて、現在のバージョンと最新のバージョンが表示される。最新バーションではないユニットにはチェックボックスが現れる。これをチェックして「アップデート」ボタンをクリックすれば、ファームウェアの更新が始まる。DU-E8080のアップデート所要時間は3分間ほどだった。
筆者のRidge Runnerは今年6月に納品されたが、ファームウェアは昨年12月のバージョン4.3.2であり、その後に5回も「不都合修正」が行われている。不都合の具体的内容が公開されていないこと、ユーザがファームウェアを確認する方法がないこと、アップデートを促す通知が行われていないこと、いずれも大きな問題だ。不都合があるファームウェアが原因で、故障や事故が起こってからでは遅いからだ。
コンピュータやスマートフォンの歴史が示しているように、ハードウェアは一過性のものでしかない。日本のメーカーがハードウェアを偏重し、ソフトウェアやユーザ体験に疎かにした結果、無残なまでに没落したことを思い起こそう。同様に電動アシスト自転車の本質もソフトウェアだ。それゆえに、ファームウェア(ソフトウェア)に注目して動向を見守りたい。
【追記】初出時に、ケーブルを接続するためにサイクル・コンピュータを外し、その状態で作業をしていた。これはサイクル・コンピュータを戻して作業するべきであった。実際にも、サイクル・コンピュータの型番はSC-E6010、そのファームウェアのバージョン3.2.0であったので、これをバージョン3.2.4に更新することができた。(2018.09.05)
【追記】Dura-Ace Di2がそうであったように、ワイヤレス・ユニットを取り付ければ、Bluetooth接続ができそうだ。しかし、これは不可能とのシマノの回答をショップ経由で得た。また、海外向けのサイクル・コンピュータSC-E8000はBluetoothを備えている。しかし、これを取り付けても動作しないと言う。手軽にファームウェアを更新する方法はないようだ。(2018.09.06)
【追記】当初は対応してなかったものの、ファームウェア・アップデートによりSC-E8000を利用できるようになり、Buetooth接続も可能になった。(2020.04.16)