自転車に「乗る」ためのレッスン 第22回 ドラマを司る自転車の位置

この年末年始、1985年にNHKの銀河テレビ小説「たけしくんハイ!」の再放送があった。僕はどういうわけか、この時期の銀河テレビ小説がよほどお気に入りだったらしく、とにかく懐かしく見てしまうのだ。そしてこの「たけしくんハイ!」は特に見直したいと思っていたところが、DVDはもちろんのこと、VHSでもいまは手に入らないと諦めていたドラマだった。久しぶりに見て、どの回のエピソードも我ながらよく憶えていると呆れたのだった。にも関わらず、忘れていたと思ったのは、このドラマのある意味、重要な狂言回しというか、エピソードを構成する存在として、自転車があったことだ。たけしの父親はペンキ屋さんで、その仕事に自転車は欠かせない。さまざまな登場の仕方をする。

だからと言われればそれまでなのだが、全15話のうち最終回を含む3話のエンディングが、荒川の河川敷を走る自転車を見送るシーンなのだ。第2話では、父親の手伝いをサボって河原でお弁当に夢中のたけしが乗り捨てた自転車が盗まれ、それを追い、見送るシーン。第11話では、見積もりの帰り、たけしの両親が二人乗りをして、母が二人乗りが初めてだと言い父に抱きつく。父親は恥ずかしがり全速力で走り出す。第15話では、たけしと父親がふたりで仕事に向かう途中、漢字を勉強し始めた父がたけしに看板の文字を問う。たけしにやり込められた父は、走り出したたけしを自転車で追う。

「たけしくんハイ!」には、あらすじは存在するが、だからといって全15回でなにか物語が完結するわけではない。ある意味、ルーティンなのだ。毎回父親が暴れ、たけしがイタズラし、母がとりなし、兄弟は淡々と勉強を続ける。第1話の冒頭で、原作者として登場した北野武が、自分の幼少期のことだが、その時代を生きた多くの人の生活、端的に1950年代の貧しさが主題だという趣旨の挨拶をしている。つまりドラマと言うより、雰囲気が強調されているわけだ。僕が記憶していたエピソードはまさにこの雰囲気だった。

それが今回の再放送では、自転車に感情移入をして見たというか、雰囲気の部分とは別に、ある意味で家族の関係性が、自転車をめぐるシーンでドラマになっているのではないかと気がついた。家族の人間関係の変化、たけしの成長が見える。父の自転車を盗まれ、これを追う羽目にあうたけし少年が、父に先んじて自転車の前を走る最終回へと向かっていたのだな、と。

「たけしくんハイ!」第2話
「たけしくんハイ!」第11話
「たけしくんハイ!」第15話

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