猫と自転車に乗れたなら (9)

サンタと自転車に乗れたなら〜

今年のクリスマスはステイホームという人たちがきっと多いだろう。しかし、子どもたちはCOVID-19(新型コロナウイルス)状況があろうとも、純粋にサンタさんを心待ちにしているはずだ。

ここ数年、この時期になるとサンタ姿で自転車に乗っている人を見かけるようになった。2014年には、サンタサイクリングがイタリアで流行ったが、そのせいか、仲間たちでサンタのコスプレ姿でライドを楽しむ人たちが増えている。

今年のクリスマスは、ステイホームが推奨されているから屋外でサンタライドを目にする機会はないかもしれない。せいぜいU-ber eatの配達員くらいか。ちなみに「クリスマスにサンタ帽子でUber Eatsの配達員をやってみた話」を読むと、サンタ(姿)がコミュニケーションを誘発するツールとして機能することが分かってなかなか面白い。来年は私もやってみようかな。

さて、自転車に乗ったサンタクロースは、意外にも絵本の世界では以前から描かれている。

例えば、1982年に出版された『サンタクロースってほんとうにいるの?』(てるおかいつこ作/福音館書店)は、これまで多くの子どもたちに読み聞かせされている、サンタクロースの絵本である。お話の中で、「雪がなければそりは使えない。船で行こうか、自転車で行こうか」とサンタが言うシーンがある。今読むと、温暖化で雪が少なくなり、自転車で行くという選択がとても現実味を帯びていて、もっともだ、と変に納得してしまう。

『ミセス・サンタはおおいそがし』(ペニー・アイブス作・絵/益田宏美訳/文溪堂出版)は、病気になったサンタクロースとトナカイの代わりに、ミセス・サンタが自分の自転車を使って、子どもたちにプレゼントを届けるというお話。掃除機をエンジン代わりにして、ペダルを漕ぐと飛べるように改造した自転車は、トナカイに負けないほど、速く高く空を飛ぶ。赤い服と帽子を身に着けて空を駆け巡るミセス・サンタを、誰もがサンタクロースだと信じたはず。サンタやトナカイも病気になるという設定は、まさに今の文脈と重なる感じで面白い。

フランスの代表的な児童書作家であり、イラストレーターでもあるグレゴアール・ソロタレフによる『サンタクロース辞典』(大岡 信 (翻訳)/朝日新聞社)は、なかなかユニークだ。サンタクロースの世界をA~Zで紹介しているが、Bはbicyclette (フランス語の自転車)で、真っ赤なサンタの自転車を描いている。表紙の神妙なサンタクロースといい、中の絵といい、見ているだけでサンタの世界に引き込まれる。ちなみに、この本は1996年にボローニャ・ブックフェアのグラフィック部門賞を受賞している。

最後は、『サンタクロースは自転車にのって』(かけがい じゅんこ 作/かべや ふよう絵/ネット武蔵野)の紹介。これは、脳性まひの重度障がい者の作者による絵本。生まれつき体は不自由、だけどおしゃべりが好きで明るい主人公が、ストレッチャーにのってサンタクロースを探す旅にでる。多様な身体に合わせた多様な自転車がデザインされる社会になってきたが、社会と人をつなぐ大切なツールである自転車が、もっと自由に、もっと安全に走れる町のデザインも必要だ。

おまけは、自転車に乗ったサンタのオーナメント。これは、ケニヤの職人がリサイクルの空き缶と針金で作ったものとバナナの繊維で作ったもの。20の発展途上国の工芸品をフェアトレードするGlobal Craftsが販売している。

どちらもなかなか味があって可愛い。それにしても、ケニアの職人さんは、なぜ自転車にサンタを乗せたデザインにしようと思ったのか、是非きいてみたい。ねっ、トラコ。

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