GoPro HERO9のアンニュイな進化

毎年秋になるとiPhoneの新機種が発売される。同じようにGoProのHEROシリーズもまた秋に新機種が発売される。これらは季節の気象現象のようであり、デジタル民族の秋の収穫祭かもしれない。そのような冗談はともかく、2018年のHERO7、2019年のHERO8に続いて、お約束のようにHERO9が登場した。毎年の進化の最新型がどのようなものであろうか。

世間的には前面のカラー・ディスプレイやセンサーの高画素化などが注目されている。全体的に高性能化、高機能化されていることは間違いない。ただ、世代を追うごとに巨大化しているのはいただけない。大きく重たくなった一因はバッテリーの大型化。しかし、短時間のトレイルなら従来でも十分だったし、長時間のロードなら外部給電が考慮されていないのが困りもの。

GoPro HERO7 Black(左)、HERO8 Black(中)、HERO 9 Black(右)
(HERO7はマウンタを内蔵しておらず、ケースを用いると一回り大きくなる)

筆者の関心事はスタイビライズ(手振れ補正)で、これはHyperSmooth 2.0から3.0へ進化している。そこでHERO8とHERO9をハンドルバーに取り付けて、タイル敷の自転車通行可能な歩道を走ってみた。いずれもフルHD/30fpsでHyperSmoothのブーストに設定している。この状況では映像を見比べても違いは分からない。もっともダウヒルのような激しい動きなら、違いがあるかもしれない。

さらに標準画角に限られるが、カメラが傾いても水平を維持するホライゾン・レベリングがリアルタイムに適用される。これはビデオ撮影やタイムラプス撮影(TimeWarp)で利用でき、最大45度まで補正する。従来はビデオ撮影後にアプリで処理していたので、その場で効果を確認できるのは有り難い。実際に撮影して処理した結果は同等であるものの、HERO8は終盤で問題が生じている。

最後にヘルメットにHERO9を取り付けて自転車で走ってみる。前半は頻繁に左右上下に顔を振り向き、後半はできるだけ正面を向くようにしている。HyperSmoothのブーストとホライゾン・レベリングを有効にしているので、得られた映像は物理的あるいは身体的に自然な動きを抹消している。これは奇妙極まりないが、そのような映像に慣れつつあることも確かだ。

これまでのHEROシリーズを遡ってみると、HERO7は強烈なスタイビライズに、HERO8は不思議なホライズン・レベリングに驚かされた。これらに対してHERO9の新規性は少ないように思える。自転車用カメラとしては、HERO7あたりで十分かもしれない。これを裏返せば、ユーザとしての筆者のカメラの使い方が進歩していないとも言える。そんなアンニュイな気分になったHERO9であった。

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