自転車と放蕩娘 (16) 環境型電動アシスト自転車キットのパイオニア

女性と自転車をテーマとするこの連載で、自転車エアバッグを開発した2人の女性をとりあげたことがある。他にも自転車に関わる発明がないか探してみたところ、Christine Outramの記事を見つけた。彼女は2009年、MITの学生チームの一員として、電動アシスト自転車キットの開発、製品化のプロジェクトThe Copenhagen Wheelを牽引した。

所有する自転車にアタッチメントを取りつけて、電動アシスト自転車に変えられる製品は、ここ5年ほどの間に低コスト化も進み、すでにさまざまな種類が販売されているようだ。筆者はまだ試したことはないが、山道や長距離を走る日に装着してみるなど、用途に合わせて選べるならば便利かもしれない。しかしながら、The Copenhagen Wheelの新規性は、電動アシスト機能だけでなく、ホイールのセンサーが収集する大気・騒音公害、渋滞、道路状況などの情報を提供するサービスとして展開しようとした点にある。

その背景には、このプロジェクトがコペンハーゲン市との連携により、都市の15年後のビジョンを見せることを目標としていたことが挙げられる。「コペンハーゲンで一番印象的なのは自転車が多いことだ」という5人の学生の気づきから、リサーチは始まった。その兆候は1970年代に遡り、自動車には180%の税金が課せられ、市は2015年までに自動車の50%削減を掲げていたが、経過は思わしくなかったという。問題解決の糸口として彼らが提案したのが、利便性を高めるための電動アシスト機能であり、都市の環境をリアルタイムに可視化するシステムだったのだ。これらの情報は、交通機関が都市に与える影響やヒートアイランド現象などの分析に役立てることができ、市民が自転車に乗る日常の行為を通して政策に影響を及ぼす可能性を視野に入れていた。

The Copenhagen Wheel は2012年にSuperpedestrian Inc.として起業し、今ではOutram自身は離れている。彼女は広告代理店のイノベーション部門のディレクターや数々の企業のコンサルタントを経て、現在ではオンラインの教育ツールを開発するEverydaeのCEOを務めている。かつて、彼女は仕事をするモチベーションについて「自分とは異なるバックグラウンドを持ち、自分とは違う考え方をする優秀な人たちと一緒に仕事をしている時が最高の状態」と答えていたが、その勢いは留まるところを知らないようだ。

2 comments

  1. 取り上げられているTHE COPHENHAGEN WHEELは、この手のキットとしては早い時期に発表されていたと思います。ただ、以前にコペンハーゲンに行った時は、数日間の滞在では見かけなくて残念でした。

    ともあれ、丸くて真っ赤な電動ユニットが印象的なので、放蕩娘的にはどう思われますか?

    その後の事業としては順調なのかな? 以下のサイトで購入できるようです。700C/25c/10速のロード・バイク用もあるのが良いですね。発送先はヨーロッパと北米だけだったので、日本への発送を尋ねておきました。
    https://www.superpedestrian.com/en/copenhagenwheel

  2. 電動ユニットはバッテリー、モーター、センサーを全部収納するという実用面からこの形になったらしいですが、目を引くデザインですよね。実物を見てみたいです。

    事業として、特にセンシングしたデータが活用できているのか、私も気になっています。

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