トヨタの未来都市Woven Cityを走る自転車

トヨタ(Toyota)は世界最大の自動車メーカーながら、販売台数が3%程度しかない弱小メーカーのテスラ(Tesla)のほうが時価総額が高い。つまり企業価値がないと見なされた屈辱的な立場にある。そのような危機的状況を脱するべく、トヨタが考える未来の都市像をWoven City(ウーブン・シティ)として発表している。2020年1月、世界最大の消費者向けエレクトロニクス展示会CES 2020でのことだ。


トヨタが発表したWoven Cityのイメージ・ビデオ

トヨタの報道資料によれば、これは人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながるコネクティッド・シティであり、静岡県裾野市に2000名程度の住民が暮らす街として建設される。その真意は治外法権的に最新技術を実証実験することだろう。道路を含めて街全体が私有地、つまり自宅の庭なのだから、旧態依然とした日本の法規制に縛られずに済む訳だ。

富士山麓に建設されるWoven City (トヨタの報道資料より、以下同様)

それではトヨタが理想とする未来都市において、どのような移動が考えられているのだろうか、特に自転車の扱いが気になる。まず、イメージ・ビデオでは現状の描写から始まる。舗装された往復二車線(片側一車線)の自動車道路、車道の端は白線を引いただけの自転車レーン、そしてタイル敷きの歩道が密接している。全体として過密気味で混沌としているが、実際の日本の都市部よりはマシかもしれない。

次に渾然としていた道路が自動車用、自転車用、歩行者用の3つに分離する。移動速度ごとに道路を分けることで安全と効率が得られる。これは現在でも欧米では少なからず見かける形態だ。もっとも、オートバイが自転車道を走る無茶ぶり。自動車だけで車道を独占したいトヨタの魂胆が露呈している。これはいただけない。だが、それを除けば完全に独立した自転車道は快適であり、大いに歓迎したい。

これはイイなと思ったのも束の間、舗装された自動車道路にタイルが敷かれ、中央線が消え、街路樹が現れる。自動車も何やら有機体っぽい形状に変わる。タイルはプラスティックごみを再生した耐久性のある高機能モジュールだろうか。頑丈で設置や保守が容易であるだけでなく、各種センサーを備え、発電および車両や機器へのワイヤレス給電機能を持つに違いない。

間髪入れず、自転車道もタイル敷きになり、大きな植え込みが並ぶ。自動車道の街路樹や自転車の植え込みは、相対的に走行空間を狭くしてしまう。しかし、センサーによって周囲を監視し、衝突を回避して効率的な走行ができるのだろう。既にオートバイは消滅しており、自転車も数が減って、唐突にローラースケートやキックボードらしき直立移動者が目立つようになる。

さらに歩道には人工芝のカーペットが敷かれ、公園のように植え込みが生い茂り、その中を蛇行する遊歩道が現れる。自転車道もそうであるように、直進性が失われ移動効率が悪くなっている。のんびりフラフラと散歩を楽しもうと言いたいのかもしれないが、自動車道だけは直進性を保っていたことを思い出そう。ここでも自動車を最優先とするトヨタの陰謀が見え隠れしている。

そして道路が縦横無尽に交差し、隙間を建物が埋めればWoven Cityが出現する。Wovenとは「糸で織り込んだ」という意味で、トヨタのオリジンである織物に由来するのだろう。ここでの糸は道路であり、道路を編み上げて都市を作るイメージが描かれている。文字通りのボトムアップだが、自動車どころか人々すら飾り物に思えてくる。後半に登場する人々の暮らしぶりも、どこか寒々としている。

このようにして完成した街角は道路ではなく広場に見える。ゆっくりと移動する自動車は乗合のミニバスや物品販売のワゴン車のようだ。郊外の道路では高速に自動車が走っていそうだが、それは自動運転であり、生活の主役ではない。これは、Fun To Driveと嘯いて人々に運転を強要し、多大な交通事故を引き起こしてきたトヨタの改悛だろうか。我が物顔の自動車が望まれていないことは確かだ。

一方で、街角には妙に多くの人がたむろしている。ゆっくり歩いている人や立ち止まって談笑している人がほとんど。この時代の人は脚力があるのだろうか、ベンチやテラス席がないのが気になる。僅かながら電動スケートボードやドローンなども見かける。それでは自転車はどうだろうか? ざっと見た限りでは2つのシーンに1台ずつしか登場しなかった。まるで間違い探しのレベルだ。

Woven Cityでは旧来の自動車を排除し、人々の生活の場として街の賑わいを創出するだろう。これは、誰もが車ナシで15分以内の移動で生活が成り立つパリの構想に近い。ただし、パリでの15分の主役は自転車であり、現実的な取り組みとして2024年までの実現が目指されている。それでは、自転車を片隅に追いやったWoven Cityでの生活はどうなるだろうか、その進展に注目したい。

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