素晴らしき自転車ライフ

素晴らしき自転車ライフ」は、こだわりの、だけど少し力が抜けたフォト・ブック。原書は「My Cool Bike: An Inspirational Guide to Bikes and Bike Culture」と題されて2013年に出版。日本語訳も読みやすく、洒落た写真が満載。横AB判ほどで百数十ページのライト感覚はコーヒー・テーブルにもおススメ。ウイルス禍でストレスが多い昨今だからこそ、リラックスして楽しみたい一冊。

最新のエアロ・ロードなどは登場しない。磨き上げられたビンテージ物も目立たない。有名なのはポール・スミスとBromptonくらいだろうか。大半は市井の人たちと、彼らが毎日のように乗りこなす自転車だ。だが、それらは実に多彩であり、いかに愛して止まない個性的な自転車であるのかが、ひしひしと伝わってくる。そこには街や自然とともに暮らす人と自転車の息遣いがある。

目的はこうだ——あえて難題に挑むことで自分の限界を押し広げる人や、驚異の身体能力を持った人の一瞬をとらえること。芸術的とさえ言える視点でこのシンプルな乗り物の概念を変えてしまう人もいれば、日常生活におけるユーモラスな仲間として、あるいはかけがえのない相棒としてのありようを教えてくれる人もいた。もちろん、コレクターにデザイナー、サイクリング・クラブ、自転車をライフスタイルに取り込んでいる人、カスタマイズして”ものづくり魂”を発揮する人、などなども。

「素晴らしき自転車ライフ」序文より

多言は無用だろう。丹念に読み進めるのも良いし、パラパラとページをめくって気ままに眺めるのも良い。雰囲気のある美しい写真に目を奪われ、味わい深い丹念なテキストを読んで感心しては、また写真を眺める。そんなことを何度も繰り返して幸福な時間を過ごすことができる。主役の自転車や乗り手はもちろん、小物や背景も美しい。そして家族や仲間、社会との繋がりまで見えてくる。

蛇足ながら、これらの素晴らしき自転車ライフが遠く過ぎ去った出来事に思えてしまう。新型コロナ・ウイルスの終息はまだ見えず、自粛という名の私権制限と同調圧力が続いているからだ。心身の健康維持のためのサイクリングは制限されていないものの、なんとなく出掛けることに及び腰になってしまう。それこそメンタル・ヘルスの危機だろう。これが一時的な感傷であることを願わざるを得ない。

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