新型コロナウイルスと自転車:グループ・ライド編

クリティカル・サイクリングでは「新型グループ・ライド」と銘打って、新型コロナウイルス時代のサイクリングの在り方を実践的に検討している。これは、ワクチンが開発されていない以上、以前と同じ生活に戻るのは随分と先になるからだ。一部の地域では自粛要請という名の私権制限が緩和されつつあるものの、当面は感染予防に努めながら工夫をして自転車を利用するしかないだろう。

新型グループ・ライドでの走行

そこで、前回のライド編では以下のように、筆者が実践しているサイクリング時の注意点を紹介した。これはソロ・ライドでは良いとしても、グループ・ライドでは奇妙な状況になりかねない。数人が10〜20メートルの間隔を空けて走行するのであれば、何のために一緒に走っているのか分からない。本来は楽しみである休憩時の会話や、一堂に会しての食事も難しいことになる。

  • 体温を計り、熱があれば自宅で静養する。
  • 他の人と2メートル以上の間隔を空ける。
  • 走行時は前後に10〜20メートルの間隔を空ける。
  • 飲み物や食べ物を持参する。飲食店等には立ち寄らない。
  • 軽い運動量にする。長時間や高負荷の走行は避ける。
  • マスクを着用する。スヌード等でも可。
  • 除菌シートや消毒スプレーを持参し、適時活用する。
(左から順に)除菌シート、アルコール消毒スプレー、マスク、スヌード

しかし、従来のグループ・ライドに拘るのは、無い物ねだりにしかならない。むしろ、新しい観点から新しい可能性を見出すべく、新しい形式を試みるべきだろう。そこで、感染予防を大前提として、以下の目標を設定した。集団走行でありながら参加者は同一の空間には存在せず、そうでありながら何らかの遣り取りをしながら集団走行を楽しむことを目指すわけだ。

  • 感染を予防して複数人でのライドを行う。
  • 同じ場所に集まる必要はない。
  • 参加者同士で意思疎通ができる。

これは単純にオンライン・チャットをしながら、参加者がそれぞれ好きな場所でライドすれば良さそうだ。具体的にはオンライン会議サービスのZoomを利用した。この手のサービスは雨後のタケノコ状態だが、Zoomは設定や参加が簡単であり、多人数や長時間の運営に慣れていたので選んだ次第だ。そして以下のルールを設定して参加者を募った。

基本ルール:

  • 2時間程度の開催時間を設ける。途中参加や途中離脱も可能。
  • 自転車での参加を推奨する。散歩や自宅からの参加も可能。
  • 参加者は自宅近くなど任意の場所で参加する。
  • 参加時にZoomミーティングにログインする。
  • Zoomの映像で走行風景や自撮りなどを配信する。映像オフも可能。
  • Zoomの音声で走行状況や近況などを会話する。音声オフも可能。

拡張ルール:(必須ではない)

  • Google Mapsなどで走行者の位置共有を行う。
  • 在宅者がホストとなり、全体の進行をサポートする。
  • 特定の時刻に休憩や走行などのイベントを設ける。
  • 特定の時刻に特定の場所へ集合する。
  • 走行したルートや撮影した写真などを後に共有する。
ホスト役コンピュータのデスクトップ

このような形式であれば、必要となる装備はスマートフォンだけなので、多くの人が気軽に参加できる。さらにスマートフォンをハンドルに取り付けたり、耳を塞がないタイプのヘッドセットを使えば尚良いだろう。サイクル・コンピュータを使ったり、360度カメラでの映像配信も考えられる。サイクリストがインターネットのノードになるのだから、さまざまな拡張が考えられるはずだ。

スマートフォン、サイクル・コンピュータ、アクション・カメラなどの装備

さて、この新型グループ・ライドを何回か実施した。自転車での参加者は数名の場合もあれば、一人だけの場合もあり、自宅からの参加者も多かった。ギャラリーも遣り取りできるグループ・ライドだから、どちらの側も不思議な興味深い体験であったようだ。サイクリストとして参加した吉岡史樹のレポートも参照されたい。以下、参加者のコメントとホストの画面録画を紹介しよう。

  • 場所は離れていても、話しながら走行するのは連帯感が感じられた。
  • 何十キロと離れている距離を感じられないのは良くもあり、物足りなくもあった。
  • 自転車に乗っているとは思えないほど音声が良好だった。
  • 使用するマイクのせいか、声が割れて聞き取りにくいことあった。
  • 好きな場所で好きな時間だけ参加できるのは気軽で良かった。
  • 走行しながら喋り続ける状況があったのは辛かった。
  • 走行中にスマートフォンの画面を僅かに見るだけで、他の参加者の状況が感じられた。
  • 自宅からの参加でありながら、自転車に乗っているような気持ちになった。
  • 特徴的な場所や有名な施設以外はどこを走っているのかは判別しにくい。
  • 走行時の風切音や周囲の騒音などで音声が聞こえにくい場合があった。
  • トンネルや山間部などで電波が途切れると、その後に手動でZoomに再接続する手間がかかった。
  • Google Mapsでの位置共有は更新間隔が長く、リアルタイムの位置把握は困難であった。


ホスト役コンピュータの画面録画

新型グループ・ライドはこれで完成ではない。むしろ最初の試みとしてスタートしたばかりだ。改善や発展の余地は多くあるだろうし、まったく異なる発想での実施も考えられるはずだ。これまでは知人に限定して参加を要請したが、より広く参加を呼びかけても良い。時差があっても海外の人々の参加も考えられる。新型コロナウイルス時代ならではのライドを探求して行きたい。

第1回新型グループ・ライドでの筆者の目的地「天空の茶畑」

【追記】知人よりアドバイスがあり、サイクリング時の注意点に検温と発熱時の自宅静養を追加した。(2020年5月16日)

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