意味なく自転車が登場するミュージック・ビデオ5選

クイーンの「Bicycle Race」クラフトワークの「Tour de France」のように、自転車をモチーフとする楽曲なら、そのミュージック・ビデオに自転車が登場するのは当然だ。ところが自転車に関係がない曲でありながら、大々的に自転車が扱われることもある。それは単なる小道具なのだろうか、あるいは隠された深い意味があるのだろうか。そのようなミュージック・ビデオを集めてみた。

The Style Council – My Ever Changing Moods

80年代のお洒落バンド、スタイル・カウンシルのソウルフルで軽快なポップ・ソング。カラフルなウェアを決めたメンバーが、細身のクロモリ・ロード・バイクに乗って田舎道を走る。これぞスタイリッシュな休日ライフだと言わんばかり。ザ・ジャムモッズ的な過激さを遠く離れて、健康的で優雅な雰囲気。ただ、気怠く揺れ動く気持ちを歌い、暗示的に挿入されるモノクロの写真が意味ありげだ。

Ariana Grande – Side to Side – Sexy Bike Riding Version 

七輪絶対領域から自爆テロ被害まで何かと物騒なアリアナ・グランデの2016年のヒット曲。そのミュージック・ビデオでは、十数人のギャル軍団がエアロ・バイクに乗ってリズミカルにペダルを漕ぐ。これを健康的なエクササイズだと思ってはいけない。歌詞には二輪車や三輪車が登場するが、これも自転車を歌っていない。むせかえるほど過剰な肉食系ソングながら、実はアリアナはヴィーガンらしい。

Ian Brown – F.E.A.R.

セカンド・サマー・オブ・ラブストーン・ローゼズのボーカリスト、イアン・ブラウンの2001年の名曲。銀色の装飾過多なBMXに乗ったイアンが、ロンドンの下世話な繁華街を後ろ向きに走る。にこりともせず強張った表情のまま、ひたすら後退する。すぐにビデオの逆回しスロー再生だと気付くが、それでも悪夢のような説得力がある。それは言葉遊びの歌詞にも似て意味があるのかないのか困惑へと誘う。

Mike Mago – The Show

マイク・マーゴは自転車王国オランダのハウス系DJ。2013年のミュージック・ビデオでは、たっぷり自転車が登場する。それもサドルにまたがり、揺れ動く女性のヒップを後方からカメラが執拗に追いかける。ご丁寧にサドルには不敵な目と唇がある。これはセクシャル・ハラスメントと言われても仕方がない。音楽も映像も凡庸ながら、当時の許容を示す歴史的価値はありそうだ。

イトヲカシ – アイオライト 

清楚なセーラー服の広瀬アリスが微笑みながら、野太い男性の声で歌い出す。そして自宅を飛び出し、黄色い自転車に乗って走り出す。これは2017年の映画「氷菓」の主題歌で、広瀬が男性の声で歌うのは趣味の悪いリップシンクだ。映画も淡々とした学園ミステリーで、女子高校生らしく髪をなびかせて立ち漕ぎする明るく朗らかなシーンはどこにもない。その落差を笑って楽しもう。

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