ヘルメットの未来型CLASSON

ニューヨークはブルックリンの自転車スタートアップBrooklyness Inc.が開発したClassonが2020年1月に届いた。アイディア満載の自転車用多機能ヘルメットだ。クラウドファンディングの成立が2016年7月、製品発送予定は2017年4月だったので、3年近く遅れたことになる。しかも実装されていない機能もある。とは言え、未来の自転車ヘルメットはかくあるべしと謳うコンセプトが素晴らしい。

まず、外観は街乗りっぽいデザインで、前方に伸びたツバが特徴的。部分的ではあるが通風性も確保されている。サイズは子供用とM/Lの3種類、カラーは白と黒にパステル調3色の5種類から選べる。重量はMサイズで500g近くあり、筆者が普段使っているヘルメットの2倍以上もある。実際に被るとズッシリと重く感じるものの、装着感は良好で欧米製品にありがちな左右の狭さは感じなかった。

Classonの正面(左側は専用ケース)

次に、現時点で実現されている機能を見ていこう。

Safty Lights(安全ライト)ヘルメットの前は白色で、後ろは赤色に常時点灯する。夜道を照らすほど強力ではないが、自転車の存在を周囲に知らせることができる。

Turning Lights(方向指示ライト)ヘルメットの前後に備わるオレンジ色の左右ライトで、自転車が曲がる方向を示す。身振りで操作するユニークな方式で、ボタン等を用いない。

Break Lights(ブレーキ・ライト)ブレーキをかけて減速すれば、自動的に後部のライトが点滅して周囲に知らせる。

Front Camera(前方カメラ)前方をビデオ撮影する。画質もフレーム・レイトも一昔前のドライブ・レコーダ並み。ヘルメットのツバ下にある録画ボタンで操作する。

Classonの後部

そして、現時点では実装されていない機能は以下の通り。

Rear Camera(リア・カメラ)後方をビデオ撮影する。

Auto Video(自動録画)詳細不明だが、ドライブ・レコーダのような常時録画機能らしい。

Sound(音声)ヘルメット内蔵のマイクとスピーカを使ってスマートフォンで通話する。

Blind Spot Detection(死角検出)後方から自動車が近づくと、ツバ下の左右ランプが点滅して知らせる。

Navigation(ナビゲーション)スマートフォンで設定した走行ルートに従って、ツバ下の左右ランプが点滅して曲がり角を知らせる。

Classonのツバの下部

以上のように実現されていない機能が多く、専用アプリにも不具合がある。だが、ライトやカメラだけでなく、各種センサーを備えていることが大きな特徴だ。身振り検出のための近接センサー、減速や衝撃を検出する加速度センサー、自動車の接近を検出する距離センサーなど、ヘルメットが各種の感覚器官を供えているわけだ。それだけに知性に当たるソフトウェアの拡充が望まれる。

ClassonのiOSアプリの画面

ただし、ヘルメットのバッテリーが2時間しか持たないのは心もとない。短時間の街乗りだけでなく、ロング・ライドにこそ使いたいからだ。それだけにヘメットの軽量化も望まれる。現時点での製品は偉大なるベータ版かもしれないが、ヘルメットが従来の防御機能だけでなく、自転車の安全な走行のためにインテリジェントな役割を果たす第一歩になるだろう。

ちなみに、筆者は交通事故による入院が続いている。一日も早く回復して、実際の自転車走行での本製品の動作確認をしたいと思う。それまでに一つでも多くの機能が実装されているだろうか。開発元のBrooklyness Inc.は昨今流行りの電動スクーターに力を入れている。自転車だけでなくパーソナル・モビリティの安全の要となるヘルメットは、今後ますます重要になるに違いない。

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