着ぐるみの象が一輪車に乗ってサバンナを目指す

イギリスのロック・バンド、コールドプレイ(Coldplay)はスマッシュ・ヒットした佳曲「Paradise」(2011)のために摩訶不思議なミュージック・ビデオを制作している。着ぐるみの象がロンドンの動物園から逃げ出して、生まれ故郷のアフリカを目指すストーリーだ。追手をシェアリング自転車で振り切ったり、手持ちのお金が少なくて自転車ではなく一輪車しか買えなかったりする。

アフリカの一本道を一輪車で走る着ぐるみの象は、途中でお面を取って素顔を見せる。その中の人こそ、コールドプレイのフロントマンであり、ボーカリストであるクリス・マーティン(Chris Martin)に他ならない。自転車好きの彼ながら、一輪車に乗るのは20何年かぶりだったらしい。それにもかかわらず、見事に乗りこなしているは三つ子の魂と優れた運動神経がなせる技だ。

クリスの自転車好きは筋金入りで、コンサート会場近くを自転車で駆け抜けて大騒ぎになったり、脚の筋肉が完全にサイクリストだと賞賛されたりする。しばしばRocky Mountainマウンテン・バイクに乗っているようだ。そう言えば、アルバム「美しき生命(Viva La Vida)」のビジュアルで、一人自転車に乗って仰け反っているのはドラムスのウィル・チャンピオン(Will Champion)だろう。

コールドプレイの他のメンバーも自転車が好きそうだ。「A Head Full Of Dreams」(2016)のミュージック・ビデオではメンバー全員がBMXに乗って街中を駆け抜けている。8ミリ・フィルムで撮影された荒れた質感の映像がスピード感を掻き立てる。そのまま自転車でコンサートが行われるスタジアムに乗り付け、ステージに登場する。ただ、その後の演奏シーンでは自転車が登場しないのが残念。

一方、コールドプレイが直接的に自転車を歌うことはなかった。シルバー・マシンの例があるので断定はできないものの、それほど複雑なレトリックを使わない彼らだから、先の2曲も自転車に関係はないのだろう。ところが、最近発売されたアルバムの終盤近く「Champion Of The World」(2019)において唐突に自転車が登場する。これは今後の変化を示唆しているのだろうか。

So I’m flying on my bicycle
Heading upwards from the Earth
I am jumping with no parachute
Out into the universe

I have E.T. on my bicycle
Because giving up won’t work
Now I’m riding on my rocketship
And I’m champion of the world

Coldplay – Champion Of The World

だから僕は自転車に乗って空を飛ぶんだ
地球を飛び出して上へ上へと向かう
パラシュートなしでジャンプして
宇宙へと飛び出していく

僕の自転車にE.T.を載せている
諦めても意味がないから
さぁ僕はロケット船に乗って行くよ
そう僕は世界一のチャンピオンさ

Coldplay – Champion Of The World

ライブ・バンドとしても超一流のコールドプレイだが、当面はコンサートを行わないらしい。世界中を回るライブ・ツアーが地球環境に大きな負荷をかけるからだ。彼らの音楽の持続可能性はまだ見つかっていない。「最大の難関は飛行機での移動」であれば、カーゴ・バイクに楽器を詰めて自転車旅行で世界を回って欲しい。それでこそ自転車が好きで、ようやく自転車を歌い始めたバンドにふさわしい。

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