ミクスチャーズのプッシュバイク・ソング

オーストラリアのロック・バンド、ミクスチャーズ(The Mixtures)の1971年のヒット・チューン「The Pushbike Song」を紹介しよう。今となっては忘れ去られたこの曲を取り上げるのは、自転車のことを歌っており、この時代には珍しかったミュージック・ビデオにたっぷり自転車が登場するからだ。毒にも薬にもならないB級キャンディ・ポップに乗って、レトロなファッションが楽しめる。

曲調はミドル・テンポの愉快な雰囲気で、なんとも野暮ったく垢抜けないのが微笑ましい。歌詞も自転車に乗った可愛い子を見つけて追いかけたといった他愛もない内容。自転車に乗ったメンバーが口パーカッションをしながらリズムに合わせて身体を揺するものの、ペダルを漕ぐテンポは違うので落ち着かない。爽快に自転車で駆け抜けると言うよりは、ふざけながら土着の踊りを練習しているかのようだ。

メンバーが乗る自転車も一筋縄ではいかない。大型のオーディナリー(だるま型自転車)に、後輪の軸がズレて上下に揺れる自転車が2台、普通ぽく見える自転車も実は二人乗りのタンデムに一人で乗っている。逆さまのドロップ・ハンドルも冗談なのか、かつての流行なのか判断がつかない。唯一ヒロインは普通の自転車に乗っているが、長いスカートがチェーンに絡まないか心配になる。

彼らだけでなく、ローラー・スケータやロード・バイク集団も道路の真ん中を我が物顏に走っている。後続の自動車は自転車を避けて走るのだから、随分とマナーが良い。なぜか車両運搬トラックの上で空漕ぎする不思議なシーンも挟まれる。そして最後にタンデム自転車の後ろに女性が乗っていることに気づくだろう。プロットもトリックもない安直なハッピー・エンドらしい。

ちなみにプッシュバイク(Pushbike)はオーストラリアやニュージーランドの英語での自転車のこと。自転車の王国、大英帝国から遠く離れて、自転車はどこか調子っ外れになったようだ。だが、このイカれた能天気ソングは両国のチャートで1位を獲得、イギリスやアメリカでもそこそこ売れたそうだから侮れない。小難しいことは抜きにして、たまにはこんな脱力ソングを流すのも悪くないだろう。

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