[ESSAY] 貸自転車ショートストーリー (12)

2016年前後、大小さまざまの企業や自治体が、シェア自転車事業に参入した。欧米や中国のように大掛かりではなかったが、小規模拠点が全国に広がった。それは市民の新しい足、また新時代のシェアリングエコノミーとして、世間の注目を集めた。

━マスコミは、IT企業の参入を華々しく報道した。話題の筆頭は、先発の「NTTドコモ」を追う「ソフトバンク」であった。

「ヤフー」などグループ企業が出資して、ベンチャー子会社「オープンストリート」を設立。「ハローサイクリング」と名付けて事業を開始した。

ハローサイクリング公式ロゴ

その戦略は、ドコモと大きく違っていた。ドコモは自治体との提携をベースに、コツコツと拠点を広げていたが、ソフトバンクはシェア拡大作戦を大々的に展開した。

まず、料金をわかりやすく、利用料だけ15分毎60円、1日1,000円に設定、月額料金などは不要とした。

対してドコモの料金体系は、パリのヴェリブを習ったためか、会員制など複雑である。例えば月額会員は基本料月2,000円、利用料は30分無料、以降30毎に100円追加などである。30分以内なら何回利用しても無料が、ウリであった。

ソフトバンクの戦略はそれだけではない。既存のシェア自転車企業や自治体と提携して、共通使用できるシステムを供給。フランチャイズチェーンのような連合体をつくった。

スマホを使って予約から決済までの仕組みを共通化、ハローサイクリングの看板を目印に駐輪場(ポート)を相互利用、店名や料金などは連携企業が独自に運営する方式だった。

この方式は、貸出用自転車にスマートロックと操作パネルを取り付けるだけの簡便性、中国式に近い乗捨て自由の利便性、地域の独自性を活かせる利点があった。

例を挙げれば、東京中野の駐車場企業が運営する「シェアペダル」や、さいたま市の実証実験「エコモビ」などである。

ハローサイクリングの看板のあるシェアペダル「アリオ葛西店」:広報資料より

別の戦略もあった。「セブンイレブン」などのコンビニ、賃貸住宅の「アパマン」や「大東建託」などの不動産系、また「阪神電鉄」など交通機関との協業も図った。

現在、全国11事業者と提携、ポート2,500ヵ所、自転車1万台規模に拡大、ドコモに迫る勢いである。

━では、ドコモは?

現在全国29都市、ポート1,300ヵ所、12,000台に広がっている。なかでも東京都ではシステムを共通化、10区に広がり、ポート690ヵ所7,500台と拡充している。

━また「コギコギ」のように独自展開を図るスタートアップもいる。

もともとは駐車場業だったが、独自のスマートロックを開発、2015年に電動車に取り付け営業開始。その後蓄積したノウハウを活かして50万円程度の低予算からできる“シェア自転車営業パッケージ”を販売。第1号が、奈良・桜井市で始まっている。

またコギコギは、「H.I.S」経営のロボットを使う「変なホテル」と提携、全国10数か所で展開中である。

「変なホテル浜松町」のコゴコギ:プレスリリースより

━多くの交通関連企業も参入している。

一例を上げれば、東京中央沿線4駅には、交通系ICカード(スイカ・PASMO)が会員証として利用できるJR東日本系の「スイクル」が登場している。

━中国式の元祖で、世界最大手の「モバイク」と「オッフォ」は?

17年モバイクは日本法人を設立、「LINE」とも提携して、札幌・福岡でスタートしたが、中国本社の身売りから現在は営業停止している。

少し遅れて、18年オッフォも日本法人を設立。ソフトバンクとの協業を模索しながら大津・北九州・和歌山で営業開始。これもわずか半年で撤退した。

━18年フリマ大手「メルカリ」も福岡などで営業開始。だが1年後に縮小した。

━今やシェア自転車は戦国時代。参入撤退が繰り返されている。

ヴェリブ方式の自治体、中国式に近い通信系企業、独自のスタートアップ、昔ながらのレンタサイクル営業が入り混じっての激戦である。

この戦いは、運営体の淘汰と集約、利用システムと料金統一が起こるまで、数十年にわたって続くことだろう。

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