自転車の安全運転を訴える教育映画One Got Fat

1963年にアメリカで制作された「One Got Fat」は、自転車の安全運転を訴える教育映画だ。タイトルを直訳すれば「一人は太った」であり、これからして意味が分からず困惑する。オープニングこそ明るく軽快な音楽が流れるが、すぐに何やら怪しげな雰囲気になる。経年劣化なのか色あせた色調とフィルム・ノイズが不安を掻き立てる。15分弱の短編なので、何はともあれ観て欲しい。

詳しく解説するのは野暮だろう。10人の子供たちが公園でランチを食べようと自転車に乗って出かける。この時、一人だけ自転車にカゴを付けていたので、全員分のサンドウィッチの紙袋が預けられる。体のいい荷物持ちのイジメだが、これがタイトルの伏線となる。そして、走り出した子供たちは不気味な顔つきで、一人また一人と道路の藻屑と消えてゆく。

そうそう、これは教育映画だった。安全に自転車に乗るには手信号、交通標識、右側走行(アメリカでは正しい)、車体登録、適正体重、一人乗り、歩行者優先、整備、そしてライトと反射板が大切と紹介される。そのようなルールを無視した子供が次々と自動車に跳ねられ、マンホールに落ちていくわけだ。そして最後に一人だけが公園に辿り着き、無表情に淡々とサンドウィッチを頬張る。

この悪夢のような展開は何だろう。嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる式の恐怖教育だろうか。事故にあう子供は人間にあらずと言わんばかりに、石膏で塗り固めた猿顔であり、目だけが不安げに動く。ご丁寧に尻尾まであるものの、いかにも作り物っぽいトホホな出来栄え。このような奇っ怪な映像がトラウマになり、子供たちは自転車に乗らなくなるに違いない。これで完璧な交通安全が実現するわけだ(?)。

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