ジャック・カレルマンのトンデモ自転車

ジャック・カレルマン(Jack Carelman)の「Catalogue D’Objets Introuvables」は「トンデモないモノのカタログ」とでも訳せば良いだろうか、有り得ない空想の産物が古風なタッチで描かれている。それは工作器具や日用品、あるいは衣服やスポーツ用具、電化製品など多種多様。1969年にフランスで出版され、これまでに日本語版を含む10ヵ国語以上に翻訳されたらしい。

このカタログには、もちろん自転車も掲載されている。どう考えても動かない自転車もあれば、役立つのか無駄なのか判断に困る自転車もある。一方で、意外とこれはアリだなと思わせる自転車もあれば、後世になって実現された自転車もある。例えば、室内練習機の横で風景画をスクロールさせて疾走感を演出するのは、今日のヴァーチャル・ライドZwiftに他ならない。ご丁寧に扇風機まで描かれている。

あるいは、2台を左右に繋いだタンデム自転車は、昨年制作した連結自転車に近いアイディアだ。これが50年も前に発想されていたのだから恐れ入る。さらに2CVのようなシェルを被せて悪天候でも快適と言いたいらしい。これは今日のベロ・モービルだし、金ピカのポルシェもある。1970年代には2座席のシェル付き自転車PPVも市販されていたとのことで、まったくトンデモではない。

イラストに添えられたテキストはフランス語なので、筆者には皆目分からない。イラストだけでも意図が汲み取れる場合もあるが、見当がつかないものや、翻訳して合点することもある。翻訳は辞書をひくまでもなく、スマートフォンのOCR(光学文字認識)や自動翻訳でなんとかなる。これもまたトンデモ翻訳だったりするが、かえって本書に相応しいシュールさで楽しめる。

このような自転車のイラストは12ページ22種類に及ぶ。本書全体では224ページだから、自転車関連は5%程度と物足りない。だが、それだけに他のジャンルでもイロイロと楽しめるわけだ。いずれもクスっと笑ったり、ナルホドと頷いたりする。いくらなんでもコレは有り得ないと憤慨すれば作者の思うツボ。むしろもっとトンデモない発想をしなければならない。

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