バズ・オルドリンの火星へのサイクリング道路

アポロ11号の月着陸船の操縦士であったバズ・オルドリン(Buzz Aldrin)は無償のVR作品「Cycling Pathways to the Mars」(2017)に出演、実写映像から3Dモデル化されたアバターとして、火星への飛行と移住の重要性を力強く語りかけている。そう、ちょうど50年前の7月20日(UTC)に月に着陸し、翌21日に初めて人類が月面に立ったその一人として、今度は火星に挑むことを説いているわけだ。

この作品はOculus RiftやHTC ViveなどのHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を装着して鑑賞する。1969年の月探索や未来の火星コロニーの様子がコンピュータ・グラフィックスで再現され、周囲を見回して探求できるようになっている。月や火星の地表に立った気分が味わえるのはVRならでは。HMDがなければ、通常の映像としてキャプチャーした以下のビデオを見れば良いだろう。

だが、なぜ「火星へのサイクリング道路」なのだろう? 地球や月から火星までの間には広大な虚無空間が広がっているだけだ。道路もなければ、自転車で走れるわけでもない。作品を何度見返しても自転車の片鱗も登場しないし、BikeやBicycleといった言葉も聞こえてこない。もしかして軌道エレベータを建設するのかと思ったが、公転時間が異なる惑星間は無理だろう。

実は、火星へのサイクリング道路は筆者の早とちりに過ぎない。ここで言うCycling Payhwaysは、地球と火星を交互にスイングバイする周回軌道のことだ。この宇宙船はMars Cycler(火星周回機)と呼ばれ、惑星の重力を推進力として利用するので、経済的に何度でも地球と火星を往復できる。つまり、Cycling Pathwaysとは楕円型の惑星間軌道を指し、自転車とは何の関係もなかったことになる。

だが、誤解は新しい観点を与えてくれる。もはや筆者にとって火星に行くのは自転車しかない。これはフロートを付けて水の上を走る自転車に似ている。通常の自転車とは動力機構が異なるが、人の動作は同じだ。つまり、ユーザー・エクスペリエンスとしての自転車であり、空飛ぶ自転車や宇宙空間を突き進む自転車も夢物語ではない。映画「E.T.」の天翔ける自転車のように、ペダルを漕いで火星に行こうと思う。

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