[輪行しませんか?] 大歩危峡編


ペダルを踏み続け、坂を登りきった。下り坂に入ると同時に、景色が開けた。

両側にそびえる急勾配の山が空をV字に切り取っていた。同じ地形が奥の方まで続いている。谷底では水流とゴツゴツとした岩が勢いよくぶつかりしぶきを上げていた。

木々は急斜面に踏ん張るように生えている。道路も谷側を柱で支えられ、斜面貼りつくようにS字を描いている。川の増水に備えているのだろうか、かなり高い所に道路が位置している。

その不思議な景色は別世界のもののようだった。こんな遠くまで自力で来れたことに大きな高揚感を感じた。

そんなことを考えているうちに、駅の場所を示す看板が見えた。私の感覚は現実に引き戻され、自分がくたくたで早く休憩したいということを思い出した。水が飲みたくて仕方がない。


今回は「大歩危峡(おおぼけきょう) 」について紹介したいと思う。今まで筆者が訪れた中でも、最もエキサイティングな土地のひとつである。

筆者は愛媛方面から自走して訪れた(※)。しかし坂が続く上に、距離がそれなりにある、加えてコンビニはおろか自販機すらもない。喉がカラカラになったことをよく覚えている。もしこれを避けたければ、輪行で祖谷口駅に行ってしまうことをおすすめする。特殊なスポットにもかかわらず、電車で行けてしまうというのは輪行的にポイントが高い。何かしらトラブルがあっても電車で帰れるという安心感がある。

※当時住んでいた千葉県の自宅から広島まで新幹線で輪行をしてそこから自転車で移動、しまなみ海道を渡り四国へ、愛媛県松山市に滞在しそこから大歩危を訪れた。日程的にそこでタイムリミットだったので祖谷口駅から電車を乗り継いで自宅へ戻った。

© OpenStreetMap contributors

【大歩危峡】
徳島県三好市吉野川中域の渓谷。長さは10km程度。入り口付近の祖谷口駅まで高松駅から電車でで90分、徳島駅から150分。 V字に切り取られたような谷型の地形が特徴。ラフティング界隈では有名なエリアらしく途中にはラフティングに特化した専門店もある。

【空を飛べる?】
この地域では、一部の住宅や施設が、構造体で支えられながら建てられている。道路も例外ではない。下の写真、矢印の部分を見ていただきたい。路面一枚の下を柱によって支えられている。自転車でこのせり出した路肩を走れば、半分空を飛んでいるような感覚が得られる。また谷の反対側に渡るための橋に、細く朽ちているものが多い。度胸試しに丁度いい感じだ。

祖谷渓(いやけい)に寄り道】
祖谷口駅から大歩危峡のある西ではなく南に進むと、日本三大秘境の一つにも数えられる祖谷渓に行くことができる。 道路の位置は大歩危峡のそれより更に高い。北側は人家も施設も一切なく、片側通行の道路が永遠と続いていく。エメラルド色の川と相まって、確かに秘境度は高い。

今回は山中のレジャースポットを紹介をした。最後にこのような場所でサイクリングをする意味について筆者なりに述べてみる。

誰しも一度くらいは電車や自動車に乗って湖や山、田舎町に行った経験があると思う。もしもそのとき、現地の移動手段として自転車が使えたとしたらと、想像してみてほしい。

自転車を使うことで、まず行動できる範囲が広がる。小回りも効くので気になった場所や道にも自由に入り込める。また遮られない五感を使ってその場所について密度の高い情報を取得する事ができる。これらの自転車に何気なく備わっている、我々の情報取得を補助する機能は、訪れた土地の魅力を感じたり、発見することを助けてくれる。

一般的に旅行時の現地での移動手段は、公共交通、自家用車、徒歩の三択だが、第四の選択肢としての自転車は旅行体験を豊かにし、一変させてしまうほどのポテンシャルを秘めていると筆者は考える。

日常の生活を助ける足としてだけでなく、非日常の体験を助ける足としても、自転車を見直せるはずだ。

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