1980年代になると、自転車需要は廉価車中心に飛躍的に増大、あまりの普及が大量の放置車を生んだ。
数字でみると、3倍を超える凄まじい増加がよくわかる。
━国内年間出荷台数
60年300万台→90年880万台
━保有台数
60年2000万台→90年6.900万台
駅前などの放置車は、全国で100万台を超える規模になり、耐久消費材としての価値を損ね、使い捨て的な価値観へと変化した。
それは国民の罪悪感の無さを生み、まるでレンタサイクルか、と紛うばかりの“チョイ借り盗難”が多発した。
これら放置車の山は、国民のモラル欠如を助長するだけでなく、都市景観を損ない、交通を妨げ、資源の無駄使いだと、社会問題化した。
これは無公害の環境対策として評価された自転車が、新しい環境問題を生む皮肉な現象であった。
撤去車は毎年増加、92年210万台のうち、持主への返還120万台、廃棄処分90万台であった。
ついに93年、放置車対応に法的根拠を与える「新・自転車基本法」が制定され、放置車の回収・保管・廃棄処分に一定のルールができた。
東京都の事例では、バッカー車で押し潰し、ゴミのように廃棄処分にした。まさに限りない価値観の下落であった。
(注)バッカー車とは、廃棄車を荷箱に押込み圧縮する機械式ゴミ収集車。塵芥車ともいう。
一方、廃棄だけでなく、資源として再利用するリサイクルの発想が生まれてきた。
その中から、自転車を修理してコミュニティサイクルとして再使用する試みが始まった。都市レンタサイクルの復活であった。
この試みは、料金が安く設定できることもあり、全国に広がっていく。
その一例は、香川・高松市のレンタサイクルである。現在も交通に観光にと、よく機能している。
保有台数700台、料金6時間まで100円、1日200円、7ヵ所のポートで返却もできる。