可能世界の自転車、電動キックスケーター

小さな車輪を前後に備えた板に片足で立ち、もう一方の片足で地面を蹴って進むキックスケーター。これにモーターとバッテリーを取り付けたNinebot社 Kickscooter ES2は、実際に乗ると不思議な印象を受けた。想像以上に強力に加速し減速する運動性能に驚くとともに、従来のキックスケーターでもなくセグウェイでもない、新鮮だが何かを思い起こす感覚があったからだ。

キックスケーターは、その形状や乗り方から、スケートボードにハンドルを取り付けた乗り物のように思える。だが、スケートボードは進行方向に対して横向きに乗るのに対して、キックスケーターは正面向きだ。また、僅かなハンドル操作と左右の体重移動でカーブを曲がる。そう、この乗車感覚は自転車に似ている。そしてそれは、キックスケーターの元祖と言える写真を見て確信に至った。

Baron Charles von Drais patented the hobby or dandy horse in France in 1818. The hobby horse was a forerunner of the bicycle and was introduced into England in 1818 by coachmaker Denis Johnson, who took out the British patent.

これはデニス・ジョンソンが1818年に制作した女性用のホビー・ホース。自転車の元祖と言われるドライジーネが発明された1817年の翌年であり、いずれもペダルを漕ぐのではなく、地面を足で蹴って進む。そこでペダルが発明されることなく、足蹴り式のまま今日を迎えたとすれば、それは電動キックスケーターに他ならない。並行宇宙のどこかにあるドライジーネ直系の自転車だ。

電動であれば足蹴りをする必要はないが、それでも立ったまま長時間移動することは辛い。この点ではサドルに腰掛ける一般的な自転車が優秀だ。また、車輪が小さく車高が低いので、キックスケーターは段差や悪路での走行には苦労する。一方、キックスケーターは簡単に小さく折り畳める。立て掛ければ駐輪スペースは狭小で済むし、バスや電車に持って乗るのも造作ない。

また、セグウェイなどの一人乗り電動走行車の中でも、キックスケーター型は最も普及するかもしれない。何と言っても自律制御機能がないので、機構が単純で済むからだ。そこで、車体の軽量化とモーターやバッテリーの強化ができる。乗車感覚も自転車に近いので、ほとんどの人がすぐに乗りこなせる。前面にハンドルがあり、すぐに足を着けることも安心感に繋がる。ただ、時速1〜2kmの低速走行は難しい。

このように長所短所があるものの、2000年前後に流行したRazorなどオモチャ的であったキックスケーターが、電動化によって一気に実用化した印象だ。いわゆるラスト・ワン・マイル問題の解決策としても注目されている。すでにアメリカなどでは電動キックスケーターのシェアリングが人気を博している。国内でも公道での実証実験が始まる。古くて新しいキックスケーターの未来や如何に?

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