自転車を認識する自転車カメラの最高峰、Mate 20 Pro

昨年夏の自転車カメラはHuaweiのP20 Proだった。これが冬には同社のMate 20 Proになった。いずれも背面トリプル・カメラとAIを駆使して、これでもかと言わんばかりのフォトジェニックな写真を叩き出す。P20 Proのモノクロ・カメラに代わって、Mate 20 Proには広角カメラが搭載されたのが大きな変更点。さらに、AI撮影のカテゴリが19種類から25種類に拡大、この中に自転車も追加された。

カメラを向けると、すぐさま画面中央に「自転車」と表示される。一般的な自転車はもちろん、小径車や電動アシスト自転車も認識する。しかも車体の半分程度が画角に入れば大丈夫。数台が密集していても構わない。リカンベントやトライクを認識するのも立派。「リ・サイクルの車輪」がダメだったのは教養(データセットとスーパーバイザ)不足なのか、アートのトロッコ問題なのか悩んでしまう。

さて、自転車が認識されると、どのような写真が撮られるのだろうか? これが食べ物なら美味しそうに、花なら活き活きと華やかに画像フィルタがかかる。人物なら皺を取って肌を艶やかに整え、すっきりした顔立ちになる。同様に自転車にも何らかの加工が施されるはず。それは新品の高級な自転車のようになるのだろうか? あるいは速い自転車や楽しい自転車のように見えるのだろうか?

そこで、晴れた日の正午頃に屋外の日陰に自転車を置き、三脚にMate 20 Proを固定して撮影を行った。ONは写真モードで自転車が認識された状態で撮影した写真。そして自転車の認識を解除したのがOFFだ。さらにプロ・モードに切り替えて撮影したのがPROで、その際に同時保存された未加工の画像をRAWとしている。撮影間隔は2〜3秒程度で、フォーカス指定やパラメータの手動変更は行っていない。

4枚の写真を比べると、RAWは周辺部が暗いなど他とは異なる点が多い。これはカメラの特性を補正していない未現像の状態なので、参考程度に見るのが良いだろう。それ以外の3枚では、ONが少し明るく鮮明な印象を与える。だが、OFFやPROとの違いは僅かのように思える。実際の画像ファイルで見比べて欲しいが、特徴的な部分を実ピクセル・サイズで並べても、それほど違いが分からない。

ちなみに、知人のデザイナーに意見を求めたところ、以下のコメントをいただいた。職業柄もあってか、自然な画作りを好むのだろう。また、別のデザイナーからも同意見ながら、ほとんど差が出ていないのとのコメントを得た。晴天下の日陰は理想的な撮影条件だから、補正する要素が少ないだろう。とは言え、同じ光で食べ物を撮影すれば露骨に加工されるので、自転車フィルタの効きが弱い考えられる。

ONの暗部はOFFに比べて強調され、コントラストが強くなっている。彩度もOFFに比べて高い。

OFFの暗部はONに比べて自然に描写されている。

PROはOFFと比べてほとんど差がないが、左の壁と窓の中の建物の明度を抑えている。

RAWでは周辺減光がおき四隅が暗くなっている。他の3枚は自動補正されている。他の3枚より赤いフレームの境界部分が自然。

PROが最も良く、自然な色合いが好印象。次いでOFFが良かった。ただし、大きな差はなく、いずれもスマートフォンの写真とは思えない恐るべき表現力と感じた。

瀬川晃

さらに、カラー・チェッカーを置いて撮影しているので、この部分を抜き出して比較しよう。2種類の分析結果も添えておく。これで自転車フィルタの特性を推測できるだろうか。OFFに比べてONはヒストグラムの山が整理されていることや、ベクトル・スコープでの広がりが強まっていることが分かる。残念ながら筆者には専門的な分析能力がないので、得意とされる方に意見を伺いたいところ。

自転車フィルタは微妙であるものの、ポタリングやツーリングでの自転車カメラとしては、ますます磨きがかかっている。カメラ評価サイトとして有名なDxO Markでは、Mate 20 Proの性能が高過ぎて結果を公表できないと噂されるほど。安っぽいグラビアじみたAIフィルタは絶好調であり、広角カメラが捉える広々とした空間はサイクリングの感覚に近い。お気軽スノッブ・カメラの最高峰だ。

ただし、高性能であるのは写真カメラとしてであり、動画カメラとなると凡庸だ。自転車に取り付けて走行撮影すれば、波打ったような映像になる。電子式手ブレ補正だけのGoPro Hero7が路面振動を見事に抑え込むのだから、光学式手ブレ補正も備えるMate 20 Proは職務怠慢だろう。もっとも、これはiPhone XSやPixel 3でも同様。手持ち撮影を前提とするスマートフォンの限界かもしれない。

さらに、最新機能のオンパレードと謳われるが、必ずしも完成度は高くない。特にフロント・カメラでの顔認証やスクリーンに埋め込まれた指紋認証は精度が低い。美麗とされるエッジに迫るスクリーンは、湾曲した周辺部が見づらくタッチに苦労する。P20 Proには付属していた保護フィルムがないのも、その形状のせいだろう。手で持つのも不安定で何度も落としてしまい、細かい傷が大量についてしまった。

一方、給電機能が面白い。重ねたiPhone XSがワイヤレスで充電されるのは微笑ましい。また、最初にSIMフリー版が発売されたのも素晴らしい。P20 Proのようにキャリアに煩わされなく済むからだ。「余計なもの」があるだの、ないだのと世間を騒がせているが、キャリアこそ「余計なもの」を満載する。もっともHuaweiアプリも小煩いので、一難去ってまた一難、求める道は遠く険しい。

【追記】悪い条件で撮影するほうが、画像処理の違いが現れ易いとの意見をいただいた。そこで、夜間の暗い照明下で撮影を行った。新たに夜景モード(NIGHT)でも撮影している。これは本が読みにくいほどの暗さであったが、そうとは思えないほど、いずれの写真も明るく撮影されている。同じデザイナーからもコメントをいただいたので、合わせて掲載する。(2019.01.08)

ONとOFFの写真は昼間の写真の差と似ていると思います。

PROでは光量不足のためノイズがかなり出てます。

NIGHTはPROと比較して明らかに補正されて綺麗ですね!特に建物の壁や、後輪のスポーク周りなど、しっかり描写されています。これを見る限り、夜景モードの補正力には驚きです。

瀬川晃

【追記】何故か掲載されなかったMate 20 ProのDxOMarkスコアが1月18日に掲載された。それによればP20 Proと同じ109点であり、ツートップとなった。次点のiPone XSを含めて比較写真が掲載されているので参考になるだろう。個人的には広角レンズが使えるMate 20 Proを多用しており、P20 Proはほぼ使わなくなった。(2019.01.20)

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