書籍Bicycling Scienceについて

筆者(sy)は一昨年、Bicycling Scienceという本に出会った。MIT Pressから出版されたこの本は、マサチューセッツ工科大学の教授であるDavid Gordon Wilsonが執筆した。この本は、主に自転車の構造や機能に関わる、科学的な分析と知識に関する本である。

本の構成はHUMAN POWER(人力)、SOME BICYCLE PHYSICS(自転車に関する物理学)そしてHUMAN-POWERED VEHICLES AND MACHINES(人力駆動乗り物と機械)で構成されている。他の自転車関連の本と同じく、この本も自転車の歴史から始まるが、個人的にこの本の面白さは、続く第2部SOME BICYCLE PHYSICSから始まると思う。

第2部では、人間が作り出す動力を車のエンジンと比較したり、どういった特徴を持っているかについて、細かく記述していく。例えば、上にある図はクランクについているペダルを回す脚に、どのような方向でどれほどの力が加わるかを表したものである。これは、1983年Okijimaによって開発されたシステムを使ったものだそうで、当時のコンピューターを駆使しデータを採取したという。

本によれば、自転車を駆動させる人間の身体は、車のエンジンより燃料電池に近いようだ。つまり、燃料を燃焼させるのではなく、化学反応により直接的に動力を生成する仕組みである。燃焼がない点だけでも、地球環境には優しい。

また、車のエンジンと自転車を駆動させる人間の、仕事をする能率のピーク値は、両方とも20~30%でほぼ同じであることは驚きである。人間は睡眠や疲労の影響を受ける。しかし機械のエンジンは燃料がある限り動く。だがエンジンは最高能率でずっと動くことはほとんどない。反面、変速機がある自転車を使う場合、人間は、最高能率にかなり近い状態で「ずっと」駆動が可能である。[p.37]

個人的には、自転車を乗るとき起きる、心理的な効果も明らかにしてほしかったが、そこに関する専門的な記述はあまりない。しかし理科系の本らしく、実際自転車に乗ることに関して、実験をしながら検証していく過程はとても面白い。

例えば、これから自転車を作ると仮定しよう。そして最大の効率で走る自転車を作ると決めたなら、どういった状態でそれが起きるか、測定をする必要がある。そのため実験のための道具を用意し、被験者に走ってもらうはずだ。しかし、その結果得られるデータは、実際のレースでのデータとは異なるものになるという。

それは、ある意味当然である。被験者は実験をされているわけで、レースをやっていない。また我々が持つ身体は、基本的に多様である。そこで、この本では身体に密接にかかわる道具の効率測定は、基本的に難しく、身体と人間の心理について考慮する必要があると、結論付ける。このような身体に対する総体的な記述もみられる点を考えると、著者の度量の広さのようなものを感じる[p.40]

個人的には、まだ本の中に登場する複雑な数式や方程式を、すべて解ける能力を持ち合わせていない。でも数学はいつも興味を持っていた分野だったので、今後は少しずつでも読み解いて行ければと思う。この本は、そういう数式やグラフなどがぎっしり載っていて、最初は壁を感じる。しかし、時には人間的な記述があり考えさせられることがある。自転車に関する、科学的な分析を試みたい方がいれば、ぜひこの本を読んでほしい。
※ 本投稿に掲載さらた写真は、筆者の持っている本をスキャンしたものであり、筆者が作成したものではないことを記す。

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