Deformable Bike 60~変形可能な自転車

作品「Deformable Bike 60」は、パイプと、それを繋ぐオリジナルのクランプからなる、自転車組立システムである。このシステムでは、自転車のフレームと各要素を、使用者が望む配置と、形にすることが出来る。

重要な役割を持つクランプは、基本的に2本のパイプをつなげる機能を持っている。各クランプは、1本ずつパイプを掴むことができ、その2本のパイプの角度を中央の関節部分を回転させ、調整することが出来る。そのクランプと、構造を補強させる構造を、一つのセットにし、体重を乗せられる構造になる。

この作品の制作で挑戦したことは、いかにして、細かいパーツまで「組み立て」ができるようにするか、であった。特に、ペダルや、ボトム・ブラケット(ペダルを回すクランク構造を構成するパーツ)そして、チェーンで構成されるような、駆動部を組み立て式にするのは難しく、チェーンが軸から少しでもずれると、外れてしまうことがあった。

そういった微調整の難しさはあったが、このシステムは同じ大きさのクランプで構成されていたので、パイプ同士の間隔を均一になりやすく、部品が軸の上に揃うようになった。その結果、少ない種類の部品で、体重を支えられる構造を作ることが出来た。

また、このシステムを利用すると、「外部」からの要素を取り入れることが出来るようになる。この機能は、普通に考えると、カスタマイズをし、他の用途に使用できるといった、「ツール」として見られがちだが、このシステムでは、その部分を目的としてはいない。そういった「変形」によって、違う操縦感覚を生み出せることが、意図していたことであった。

しかし、システムを作り、変形をさせながら操縦をしてみた結果、これによって得られる身体感覚の幅は、予想していたよりは狭く感じた。また、それには「変形」させるために必要な労力、つまり、分解と再結合の作業が、あまり簡単ではなかったことも影響した。

結果的に、簡単な機械部品の組み合わせで表現できる動きの幅より、人間の身体の持つ運動の可能性の方が、はるかに多様で、膨大なものだと気づいたことは、この作品を制作したからこそ得られた、大きな学びだったと言える。そこで、続く次の作品では、何より「身体の動きを基準にする」ことを、大前提におくことにつながったのである。

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