シマノの電動アシストSTEPSの実験

【注意】本稿では電動アシスト自転車のスピード・センサの動作を確認し、機構を変更している。改造やハックと呼ぶにはおこがましいが、予期せぬ故障を引き起こし、メーカの保証を受けられない可能性がある。また、公道で走行すると道路交通法違反になる。無人の私道などでの走行であっても、十分に安全に配慮すべきだ。筆者は一切の責任を負わないので、同様の試みは自らの責任で行って欲しい。

道路交通法施行規則第一条の三により、日本の電動アシスト自転車はガラパゴス的状況に陥っている。そこで、その複雑過ぎる法規制を実践的に検証してみる。この規定によれば、アシスト率は速度によって決まる。例えば、時速10kmまでのアシスト率は2.0、ペダルを踏み込む力の2倍までアシストされることになる。つまり、電動アシスト・ユニットは何らかの方法で、走行速度を把握しなければならない。

ここでは実証機としてミヤタのRidge Runnerを使う。その電動アシスト・ユニットはシマノのSTEPS E8080で、走行速度を検出するスピード・センサーSM-DU11は、後輪の軸受近くに装備されている。右側からディスク・ブレーキの隙間を覗けば、菱形の小さな部品が見える。これがスピード・センサーで、ディスク近くに取り付けた磁石が通過する時間間隔、すなわち後輪の回転時間で速度を検出する。

このスピード・センサーから細いケーブルが延びて、クランク周りのドライブ・ユニットに入っている。3ヵ所のネジをプラス・ドライバーで外せば、カバーが外れる。細いケーブルが2本接続されているので、スピード・センサーに繋がる後部のプラグを引き抜く。ご丁寧にも、Ridge Runnerには専用工具TL-EW02が付属している。これはまるでプラグを外せと言っているようなものだ

これでドライブ・ユニットからスピード・センサーが切断された。つまり、速度情報が得られない状態になった。電源を入れると、特にエラーもなくユニットが起動する。自転車を漕ぎ出すと速度はゼロと表示されるものの、アシストは効いている。これは意外と思ったのも束の間、やがてW011のエラーが表示されてアシストが止まる。「走行速度が検出できません」とのこと。それはそうだろう。

次に2mmのアーレンキーを使ってスピード・センサーを取り外す。これは後輪を外したほうが作業がしやすい。取り外したスピード・センサーはチェーン・ステーに取り付け、相対するようにクランクに磁石を取り付ける。これはケイデンス・センサーと同じ要領だ。動作確認するだけなので、取り付けはタイラップで簡単に済ませる。磁石はケイデンス用の専用品ではなく、リング状のネオジム磁石で代用した。

重いギアなら、車輪の回転速度よりもクランクの回転速度のほうが遅い。Ridge Runnerのトップ・ギアではギア比が3.09なので、クランクによって検出される速度は実際の速度の1/3ほどになる。 Garminやスマートフォンなど他のスピード・メーターを併用して、本来の速度とスピード・センサーの速度とを比較すると良いだろう。この時、電動アシストはOFFにしておき、人のいない公園など安全な場所で試そう。

さて、ここからは思考実験となる。まず、本来は時速24kmで走行すると、アシスト率はゼロとなってアシストされない。だが、実際の速度の1/3しか検出しないスピード・センサーでは時速8kmとなるので、アシスト率は2.0で、ペダルを漕ぐ力の2倍の力でアシストされる。時速30kmでもアシスト率2.0であり、その後は徐々にアシスト率が減る。これは強力なアシストとなるに違いない。

一方、懸念される事柄もある。後輪の回転とは異なり、ペダルを踏むのを止めれば回転速度は急にゼロになり、次にペダルを漕げば回転速度が急に上がる。このような速度の変化は異常と見なされるかもしれない。また、本来なら減衰する高速域でもアシストを続けるので、モータに負荷がかかり続ける影響も心配だ。これは欧米の過激なダウンヒルにも対応してきたドライブ・ユニットの性能に期待するしかない。

ちなみに、電動アシスト先進国の欧米では、各種ユニットに対するハックが行われている。これも基本的にスピード・センサーの挙動の変更で、後輪のセンシングを減速器で遅くするものや、特別なボックスを取り付けて速度情報を書き換えるものがある。ファームウェアを書き換えるツールもあるが、現在発売されていないのは、シマノがブロックしたのだろうか。なにかと興味が尽きない。

【追記】より自然な速度変化となるように、続編では車輪の回転を減速させて速度検出を行った。(2018.11.30)

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