Magic Leap Oneで拡張現実ライド

ド派手なデモ映像と巨額の資金調達を行いながら、その実態が謎に包まれていたMagic Leap社が、2018年8月より開発者向けの製品としてMagic Leap Oneの発売を開始した。これは透過型の眼鏡型ディスプレイであり、目の前の光景にデジタル映像を重ねて表示する。つまり、現実と切り離されるVR(仮想現実)ではなく、現実と情報が融合したAR(拡張現実)やMR(複合現実)の世界が現れる。

現在、Magic Leap Oneはアメリカ合衆国の、それも限られた都市にしか配送されない。専門のスタッフが製品を届けるとともに、機器の設定調整を行うからだ。そこで、日本で同製品を利用するには、アメリカの該当地域で購入した上で、日本へ運ばなければならない。しかも、日本での技適マークを取得していないだろうから、そのまま使えば電波法に違反する可能性が高い。

もっとも、眼鏡型ディスプレイ(Lightwear)と腰に下げる小型コンピュータで(Lightpack)はケーブルで繋がっている。そこで、アメリカでの設定時にWi-FiとBluetoothをオフにしてから、日本に運ぶことにする。これで電波を発しないので、日本で使用しても電波法に違反しない。インターネットなどの通信はできないが、映像表示や音楽再生などはできる。開発もUSBケーブル経由で可能だ。

もうひとつ、手に持って操作するコントローラ(Control)がある。これは無線ではあるものの、3軸の交流磁場発生器(a transmitter that generates 3 orthogonal AC magnetic fields)であり、電波法の適用外と思われる。実際にも、Wi-FiとBluetoothがオフの状態でコントローラは動作するし、コントローラを電波遮断袋に入れても動作する。つまり、電波を発していないと判断して良さそうだ。

念のために、技適マークの問い合わせ先である総合通信局に電話してみた。担当者によると、磁場は電波法の適用外だが、動作原理など技術詳細が示されない限り、担当部署の紹介もできないとの一点張り。例えば、高周波利用設備に該当する場合があるからだと言う。つまるところ、お墨付きを得るには、正規の手続きを踏んで技適マークを取得するしかないのだろう。しかし、それは個人では不可能に近い。

ともあれ、君子危うきに近寄らず、日本ではコントローラを使わないでおこう。本体の電源を入れれば、スタートアップ空間としてメルヘンっぽい楽園が現れる。これでMagic Leap Oneの表示能力の一部が確認できる。HoloLensやMeta 2より鮮明な映像だが、噂されていたような現実と区別がつかないほどの存在感があるわけではない。左右方向の視野角は広めで、上下方向は見切れがちだ。

HoloLens(左)、Magic Leap One(中央)、Meta 2(右)

Magic Leap Oneを装着して自転車に乗ることも可能。明るい屋外でもHoloLensほど視認性が悪くならない。映像は半透明っぽく見えて、視界を遮らないのは好都合。装着感も良好で、比較的小さく軽いので負担は少ない。ただし、周辺視野が狭いゴーグル型なので、左右確認など安全面では不安が残る。また、コントローラや空間認識は確かめられていないので、Magic Leap One本来の評価はできない。

このようにHoloLensに続いてMagic Leap Oneによって拡張現実ライドの可能性が広がってきた。しかし、電波法によって先進的な技術が制限されるのは納得し難い。これは道路交通法による電動アシスト自転車の制限と似ている。グローバルな時代、急激に変化する時代にあって、何を守っているのだろうか? その行き着く先には衰退しかないことを、何度繰り返せば気が済むのだろうか?

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