シャン・ジャンの自転車塗り絵本

上海出身でロンドンで活躍するシャン・ジャン(Shan Jiang)の「The Bicycle Coloring Book」は、その名の通り、自転車を題材とした塗り絵の絵本。白地に細いペンで輪郭線だけが描かれているので、色鉛筆やカラーペンなどで色を塗って楽しむ趣向。横長の変形A4版で全144ページ、片面のみが塗り絵になっている。明快なストーリーはないものの、ゆるやかな連続性をもって進行する。

自転車絵本とは言え、爽快なサイクリングや白熱のレースが描かれているわけではない。それどころか、自転車に乗る人はいない。代わりに猫や鳥、蝶や鯨、果ては竜や宇宙飛行士まで登場する。無人の自転車は荒廃した街や野原に佇み、荒れ狂う海に飛び込み、宇宙に飛び出して異星の遺物となる。最終ページに至るまで波乱万丈の本書の副題は「Journey to the edge of the world(世界の果てへの旅)」。

ちなみに、絵柄は非常に細かい。お手本なのか、中央部に色が塗られたページがある。このレベルでの彩色は極細ペンでも難しそう。原画は大判であるか、自由に拡大できるデジタル画像に違いない。もっとも、プラモデルの組み立を潔しとしない筆者は、どのような絵柄であっても色を塗るつもりはない。白地図のような絵本こそが美しい。そう、心の中で彩色するのだ、と嘯いておこう。

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