SANOMAGICのマホガニー自転車

知人が言うには、職場の近くに木でできた綺麗な自転車を作っている人がいて、芸術品のような美しい佇まいだったらしい。その後、新木場の倉庫街を通りかかり、この辺りかなと思っていた矢先に、まさに煌めくような木製自転車が颯爽と走り抜け、建物の一角に入っていった。この好機を逃す手はない。思わず後を追って話しかけてみた。この工房はSANOMAGIC、自転車の主は佐野末四郎氏であった。

同氏は突然の訪問に怪訝そうな表情。あなたは自転車に乗るのか?と尋ねられる。きちんと自転車に乗る人しか相手にしないと強調する。それは木製自転車の評判が高まるにつれて、収集や投機を目的とする購入希望が相次いでいるためらしい。自転車を作る者としては、自転車は乗ってこそ意味と価値がある、飾ったり売買するだけであれば、もっての他だと言う。誠実で頑固な職人気質が伺える。

そこでクリティカル・サイクリングのシールを渡して趣旨を説明する。毎日のように自転車に乗り、休日には遠方に出掛けることを伝える。WEBサイトや書籍で見かけていること、昨年の展覧会で実物に接して感銘を受けたこと、その展覧会に協力していたことも話す。このようにして日頃の様子が伝わったようで、古い資料や製作中の部材を示しながら、説明をいただく。

「自転車の世紀」展に出品されたマホガニー小径車

この自転車はマホガニーの積層材で作られており、柔らかい乗り心地とともに、しなりの反発を利用して漕ぐ力を強化する。可能な限り中空構造になっており、強度と軽量さを両立する。このような特性によって、より速くより長くライドができるそうだ。ペダルに足をかけて少し踏むだけで、フレームが面白いようにたわみ、しなる。高級家具の如くマホガニーの木目と塗装は美しく、滑らかで温かみがある。

積層中のマホガニー材

昨年刊行された「The Wooden Bicycle: Around the World」にも佐野氏とマホガニー・バイクが取り上げられている。この書籍に紹介されている木製や竹製の自転車がそうであるように、他はフレームだけが木製であることがほとんど。ホイールまで木製である自転車は少なく、別注ながら木製バトン・ホイールの性能は素晴らしいと言う。

ただし、制作には時間がかかり、年に2〜3台しか作れない。より手間がかかる小径車の受注は既に中止した。ロード・バイクも何年か先まで予約で一杯。使用しているホンジュラス・マホガニーが入手困難になることもあって、現在は原則的に注文を受け付けていない。これまで価格は200万円前後であったが、今後は250万円から300万円になるだろう、とのこと。

ちなみに、土曜日の午後に工房の見学会を実施している。この時は少し早い時間だったが、有り難いことに時間を割いて説明していただいた。自転車の他には木製の家具やスピーカーも作られている。エイジングのためか新作スピーカーが奏でる音楽に工房が満たされていた。なお、佐野氏の経歴や作品はWEBサイトに詳しく掲載されているので、参照されたい。

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