那須のサイクル・ステーション

数日間だけだが、栃木県の那須高原に滞在した。御用邸や小洒落た別荘が並ぶリゾート地。地域密着を謳うプロチーム聖地を目指す取り組みなど、自転車が盛んらしい。マップで検索すると「那須サイクル・ステーション」が見つかる。ここへ行けば、いろいろと情報が得られるに違いない。いそいそと出かけてみると、そこには平屋の立派な建物があった。十数台は停められそうな駐車場まで完備されいる。

だが、何かおかしい。その日は休日であったが、駐車場には1台も車が停まっていない。周囲にも人影がなく、ひっそりしている。施錠されていないので、恐る恐る扉を開けてみる。これまたガランとしていて誰もいない。無造作にパイプ椅子やテーブルが並べられており、没個性的な事務所っぽいロッカーや戸棚が寒々しさを倍増させる。一体ここはどこだ?何の施設だ?

僅かにロッカーの中にフロア・ポンプ(空気入れ)、マルチ・ツール、タイヤ・レバーなどがあり、簡単な自転車整備ができるようになっている。ただし、応急パッチやチューブなどの消耗品はない。戸棚には自転車雑誌の最新刊やバックナンバーが置かれているが、種類は少なくレース系がほとんど。別のラックには観光案内のパンフレットやマップがあるものの、自転車関係は皆無。

奥には男女別の更衣室があり、自由に出入りできる。更衣室内にある数個の小型ロッカーには鍵が付いているので、荷物を入れて施錠して出かけることもできる。ただ、物陰に何かが隠されているかもしれず、不安を覚える人もいるに違いない。また、水場がなく、シャワー・ルームやトイレもない。これらは道を隔てた那須町スポーツセンターを利用するように案内されている。

一方、パイプ椅子やサイクル・ラックの数が妙に多いことや、駐車場が広いことに思い当たると、多人数に対応できることに気がつく。自主イベントを企画して、集合場所はココにすれば良いわけだ。これは写真検索からも推測できる。しかも、誰に断ることもなく気軽に利用できるので、前日に思い立ってフラシュ・イベントもできる。数十人ものサイクル拠点として活用できるのは、他にはない特徴だろう。

このように那須サイクル・ステーションは、無愛想と言えるほど簡素で呆気ない。ここには手書きのマップもスタッフとの談笑もない。だが、それは勝手な幻想だ。瀟洒な施設もあれば、殺風景な場所もあっていい。万能な機能や無限のサービスは有り得ない。何を提供するかは運営者の判断であり、それぞれの想いがあるに違いない。そんな当たり前のことに気づくと、なんだか嬉しくなってしまった。

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